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金曜日が、有休を取って健人が由宇を迎えた日。
土曜日が、二人でショッピングを楽しんだ日。
そして、日曜日の夜。
由宇は、ニコニコしながら日記をつけていた。
日中は健人の運転で、ドライブを兼ねて郊外の観光牧場へ遊びに行った。
そこで、初めて本物の生きた馬を見たのだ。
大きな体、温かな肌、優しい目。
「そして、馬糞も落ちていました」
「由宇くん、そんなことまで書くの?」
「だって、感激したんですよ!?」
「お馬さんのウンコに?」
ちょっぴり、からかうような健人の口調だったが、由宇はにこやかだった。
「健人さん、ありがとう。また、あの牧場に連れて行ってもらえますか?」
「えっ? いいよ、行こう」
今度は、もう少し長い時間、乗馬体験をしようか。
そんなことを話しながら、健人は何気なく由宇の手元に視線を落とした。
青いインクで『そして、馬糞も落ちていました』と書かれている。
その筆跡に、目を見張った。
(由宇くんの字……あの手紙と同じ癖がある)
由宇に同封されていた、送り主からの手紙。
幼さの残る楷書で、ていねいに書かれていた、あの手紙と同じ文字だった。
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