79 / 256
3
「何か、怪しい。長谷川さん、気を付けるッス」
「彼女、悩みがあるって言ってたし。気分転換になれば……」
「甘い! 甘いッス、長谷川さん!」
ここだけの話、と羽田は声をひそめた。
「吉井さんは、裏表が激しい子と聞いてまス」
「ああ、なるほど……」
思い当たる節があるな、と健人はうなずいた。
「くれぐれも、トラブルに巻き込まれないよう、気を付けてください!」
「うん」
いや、すでにもう巻き込まれているのだが。
頭をかく健人に、羽田は気を取り直して訊ねた。
「長谷川さんは、誰か誘う人がいるんですか?」
「私は、最近同居を始めた子と……」
「同棲、ッスか!?」
「こ、声が大きいよ」
実は、アンドロイドくんと暮らしてる、と健人は正直に話した。
「由宇くん、って名前でね。素敵な子なんだ」
「良い、ッスね! 最近じゃ、アンドロイドと結婚する人もいるし!」
羽田は気軽にそう言ったが、健人は小さく息を飲んだ。
結婚。
由宇くんと……結婚!?
「じゃ、長谷川さん。話、進めますね!」
「あ、うん。よろしく頼むよ」
羽田は去ったが、彼の言葉はいつまでも健人の心に残っていた。
ともだちにシェアしよう!

