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「社員旅行の候補地。ここで、どうッスか?」
「へぇ。ONKアミューズメントパーク、かぁ」
「ここなら老若男女問わず、誰でも楽しめるッス」
ONKは、三世代での旅行客をターゲットにした、複合型の娯楽施設だ。
広大な敷地に、遊園地や水族館、お洒落なショップ、飲食店、温泉にホテルまで揃っている。
健人は、日頃からお世話になっている皆さんへと、全社を挙げての旅行を提案したのだ。
社員はもちろん、その家族も招待する。
独身の人間は、郷里から両親を誘っても構わない。
交通費は、飛行機から鉄道まで、全て負担する。
そんな太っ腹な企画に対応できる場所を探すように、羽田は頼まれていたのだ。
「それで、ご相談なんスけど。彼女同伴、ってのは……?」
「もちろん、いいよ。羽田くん、彼女と素敵な思い出を作ってよ」
「ありがとうございまス!」
この会話に、美咲が割り込んで来た。
「いいな、いいなぁ! ね、長谷川さん。私も、彼ピ誘ってもいいですかぁ?」
急に上がった甲高い声に、男二人はギョッとした。
しかし健人は、すぐに笑顔だ。
「吉井さんも、ぜひ」
「は~い」
キャッキャと去って行く美咲の背中に、羽田は疑わしい目を向けた。
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