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第十六章 社員旅行は波乱の予感

 週明けの月曜日。  美咲は、いつもより早く出社した。 「ふふっ。急いで長谷川さんを、捕まえなくっちゃ!」  そして、金曜日の続きをするつもりだった。 『もぅ! 長谷川さん、先に帰っちゃうなんて、ひどいですぅ!』 『ごめんごめん。何か、お詫びをするよ』 『えぇ? いいんですかぁ?』 『欲しいものとか、あるかな』 『う~ん。新作の可愛いバッグ、あるんですけどぉ』  そんな勝手な会話を、脳内で妄想していた。  だがしかし。 「長谷川さん! 例の件、プラン立てたッス!」 「ありがとう、羽田くん。早いね」  健人の部下・羽田が、彼のデスク傍に立っているのだ。 (チッ! 先を越されちゃったぁ!)  心の中で、羽田を邪魔に思いながらも、美咲は二人の会話に耳をそばだてた。

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