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「僕は、行為の最中にも、考えてしまったのです」 『由宇くんとが、一番、気持ちイイ、よ……ッ!』  この健人の言葉に、由宇は嫉妬した。  健人が過去に、他の誰かとも同じように、愛を交わしたのだと知ったからだ。 「とても見苦しいですよね、僕は」 「そんなこと、ないよ」 「でも。吉井 美咲にも、ジェラシーを覚えてしまいましたし」 「いや。やっぱり、返って嬉しいな」  嬉しい? と由宇はそむけていた顔を、健人に向けた。  伏せていたまなざしを、健人に向けた。 「嬉しい、とは? なぜですか?」 「それだけ強く、由宇くんが私を想ってくれてる、って感じられるから」  そして健人は、ふわりと彼を腕の中に包んだ。 「さ、もう寝よう」  由宇は、たとえようもない幸福感に満たされた。  苦いジェラシーが、甘い安らぎに変わっていく。 「僕、ピロートークしたいです」 「いいよ。何か、話してみて」 「健人さんとの激しいエッチで、僕のホルモンバランスが乱れています」 「……これまた難しいことを、言うなぁ」  それでも二人は、言葉を交わした。  そして、愛を紡いでいった。

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