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 由宇がシャワーを浴び、健人が朝食の用意をしている、その時。  圭吾は、乃亜を前にして、由宇へメッセージを送信したことを取り繕っていた。 「どうしたのさ、圭吾さん。僕の部屋で、何かしてたの?」 「いいえ、乃亜さま。今、お邪魔したばかりですよ」  圭吾の返事に、乃亜は唇を尖らせた。  その仕草と表情は、由宇そっくりだ。  いや、逆だ。  由宇の方が、乃亜に瓜二つ。  乃亜は、自分を素体にして、由宇を造ったのだから。 「二人きりの時は、乃亜くん、って呼んでよ」 「そうでしたね、乃亜くん。まだ、慣れなくて」 「その言葉遣いもダメ! ちゃんと、フランクに喋って欲しいな!」  健人さんみたいに、と乃亜は怒る。  彼は、由宇を介して、ヒトの心を学び始めているところだ。  この、無機質な檻のような研究機関では、決して知ることができなかった、情操。  好意を寄せた相手への、言動などもだ。  おかげで乃亜は、圭吾にその素直な想いを伝え、彼と愛し合うようになった。  圭吾もまた、乃亜を大切に見守っていたからだ。  ただ、お手本が由宇と健人。  乃亜は、彼らを真似た愛し方しか、まだできないでいた。

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