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第2話

「瑞希のイク時のエロい顔とか……ココに挿入(いれ)るのを想像しただけで、簡単に抜ける」 指の腹がピタリと「ココ」に押し当てられる。 翔真の明け透けな言葉に、かあぁぁっ……と顔だけじゃなく全身が熱くなったのを感じた。 「この、絶倫ばかっ。そんなこと聞いてねぇし」 「瑞希の口から絶倫か、ウケるな」 翔真が肩を揺らして笑う。 「うるさ……」 最後まで言わせてもらえないまま、押し当てられた指を、ズッと奥まで挿入される。 「んんっ」 さらにもう一本。 ローションの助けを借り、丹念に慣らされ開かれる。内を濡らす液体の冷たさは、すぐに中の熱と相まって解け合う。翔真の指で深くまで掻き回されるたび、自らが濡れるわけではないのに、濡れていくような感覚があった。 「……あっ、あぁ……っ」 ジンッと下腹部を充たすようなたまらない疼きが生まれる。瑞希は淫らな自分の欲望を自覚する。快感に貪欲な粘膜は、指では物足りなくなっている。もっと太く硬いモノで擦って欲しい。掻き回されて突き上げられたい。焦れた熱を鎮めて欲しい。 指がゆっくりと引き抜かれる。 膝が胸に着くほど抱え上げられて、翔真の熱欲を入り口に押し当てられた。 解れ具合いを試すように、何度か擦りつけられる。ローションで滑るから、引き攣る痛みもなく、わずかにめくれた粘膜は、その動きにさえ感じてしまう。 ヌプッと入り口を抉じ開けて、一番太い先端が沈みこんでくる。慣らされ蕩けた内壁は、翔真のモノを懸命に呑み込んでいく。 「ああぁぁ……ッ」 着実に翔真の「形」へと拓かれながら、待ち望んだ熱量と快感を、体の深いところで味わう。 痛みで体を強張らせることなく受け入れてしまえるのは、3年もの間、体を重ね合ってきた経験からだ。翔真は自分を不用意に傷つけたりしない。その信頼もある。 ほとんど反射的に、内にあるモノを喰い絞めていた。体が勝手に翔真を感じようとしている。 「たまんねぇな。お前のナカ、絡み付いてくる」 「……いちいち言うなよ」 恥ずかしい。はしたないと思いながらも、瑞希は自分の体の反応を、自分でとめられない。 翔真が目を細めてクスッと笑った。 「やっぱり可愛いな」 肉同士が馴染んでいるのがわかるから、翔真も待ったりはしない。腰を大きくグラインドして、動き始める。ゆっくりスタートした抽送は、次第に力強いものへと変わっていった。抜き差しされるたびに、内壁は強烈な快感を生む。 「はぁっ、あっ、うんっ、くっ、あぁッ……」 突き上げられる度に上がる矯声を抑えられない。 激しい律動。熱に熟れた肉が擦りあう。摩擦しあうだけ。なのに、なんでこんなに気持ちいいんだろう? 翔真の腰使いが、大きな動きから、比較的浅い所を突くものへと変わった。男の性感帯を狙いすましたように。瑞希の一番弱い所。そこを小刻みでリズミカルに攻められたらひとたまりもなかった。 「あっ、あぁッ、そこ、やだっ。やめっ……おかしくなるっ、からっ……」 快感のうねりが渦を巻き、内壁を蹂躙する。圧倒的な快感が、体の内を制圧しようとしていた。 (あっ、来る……!) 何かがゾクゾクゾクッと背筋を競り上がってくる。 翔真が繋がった所に指を這わせた。 「瑞希、ここだけでイって」 勃ち上がった性器の根元を、指の輪できつく戒められる。痛みを意識するより先に、昇りつめる方が速かった。 「っ、あぁぁッ……!」 腰がビクビクと痙攣する。 射精を伴わないドライオーガズム。一瞬だけで終わらない、最高潮の持続した快感が続く。 愉悦に震える内壁をさらに突き上げられ、断続的な絶頂が襲う。快感と興奮に脳髄まで痺れる。 強烈なエクスタシー。頭の中が真っ白になり、ほんの一瞬だけ意識が飛んだ。 翔真も瑞希の締めつけがキツかったらしい。低く呻いて瑞希の中に欲望を吐き出す。翔真の迸りを最奥に浴び、瑞希は意識の向こう側で、それにも感じてしまった。 「……完全に持ってかれた。締めつけすぎだろ、瑞希」 「……知るかよ、バカ翔真」 荒い呼吸を繰り返しながら、羞恥を隠すように憎まれ口をたたく。悪態をついても、翔真はククッとおかしそうに笑うだけだ。 翔真とセックスし始めた3年前の夏は、痛いばかりで、とても翔真を悦ばせるどころじゃなかった。けれど、今は違う。翔真をちゃんと自分の中でイカせることができる。それが誇らしくもある。 恥ずかしいことはずいぶんされてきたし、大抵のことには動じなくなってしまった。でも、後ろだけでイケる体になったことには、やっぱり抵抗があるし、恥ずかしさがつきまとう。 それなのに。 「好きだよな、瑞希。ここだけでイクの」 「……だから、いちいち言うなって言ってるだろ」 この男は、なんでこうも屈辱を煽ることしか言わないんだろう?と腹立たしく思うが、否定できない。射精だけでは味わえないこの強烈な快感を知ってしまうと。 「瑞希がここまで化けるとは思わなかったけど、嬉しい誤算だったな。開発しがいのあるイイ体だ。お前とエッチしてると、ほんとに興奮する」 「……黙れよ」 「褒めてんだよ」 ひとつ揺すり上げられて、翔真と繋がったままなのを思い出した。しかも、翔真のモノは再び硬く、圧倒的な存在感を誇示している。 「バックでいい?」 「……うん」 翔真のモノが一度抜け出ていく。自分の内から失われたものに、少しばかりの喪失感を感じながら。 翔真からのリクエストに応えるために、瑞希は自分から体の向きを変え、うつ伏せになる。翔真が挿入しやすいように、尻を高く上げて突き出した。 後ろからの方が体への負担は少ないし、瑞希も好む体位だから拒む理由はない。 だが、翔真の行為はあくまでも瑞希の予測を裏切る。 双丘を翔真の大きな手に掴まれ、親指でたった今受け入れたばかりの所を、ぐっと左右に押し開かれた。 「やっ……何して……」 艶かしく濡れて淫らにひくつく孔から、中に放たれた翔真の精液がツッ……と溢れだしてきた。ヌルリと内股を伝う。 そこに注がれる翔真の視線を、痛いほど意識する。羞恥で身を焼かれそうなのは、今日だけで何度目だろう。 その羞恥とは裏腹に、瑞希は自分の股間が、また熱くなっているのに気づかなかった。 「いやらしいな、瑞希。……何度しても足りない」 先端をグッと強く押し当てられた瞬間、一気に奥深くまで突き入れられた。腹の底まで真っ直ぐに串刺しにされる。 「あうっ!」 衝撃に堪えきれず、瑞希の放った精がシーツに飛び散った。ガクンと崩れ落ちそうになる腰を、がっちりと翔真の手に掴まれる。 そのまま何度も腰を打ちつけられた。 「あっ、あぁっ、ンッ、アァッ……激しい、って。……もう、ちょ……ゆっ……くり……」 グチュグチュと響くいやらしい水音。ぶつかり合う肌と肌。飛び散る汗。 「ごめん、ちょっとだけ、我慢して」 翔真は手加減する気はないらしい。 正常位でするのとは、角度も感じ方も違って、バックはまた格別な気持ちよさがある。 だが、あまりの激しさに体がついていかない。 「アッ、もう……、かん、べんっ……しろ……よ」 泣きが入りかけた時、翔真が動きをとめ、瑞希の顎を引き寄せ、唇を求めてきた。苦しい態勢ながらも瑞希は応じる。 もう一方の手で、手早く性器を扱かれた。 繋がったままのキスは、容易に興奮を煽る。 「ゆっくりするから、一緒にイこう」 翔真の言葉に、瑞希はちいさくうなずく。 腰を抱え直されて、再び抽送が開始される。体の深くまで抜き差しされる度に快感を感じた。自分の体がこんなにも官能に弱く、快楽に従順だとは思わなかった。けれど、今は何も考えず、本能に導かれるまま身を委ねる。 最後の力強い一突きと共に、翔真の精液が迸る。その熱さを健気に受け止めて、瑞希も昇りつめていた。 こんなにも乱されたのはひさしぶりだった。一週間前にも、「瑞希と一週間もエッチしないのは寂しい」とか言いがかりをつけられて、ずいぶんなことをされた気がするけれど。 ぐったり疲れて動きたくない。すぐに眠りに落ちないのが不思議なくらいだった。 翔真の長い指で精液を掻き出される。後始末をされても、瑞希はされるままになっていた。シャワーを浴びる気力もないから、体は固く絞った濡れたタオルで、手早く清められていく。 「ごめんな。加減できなくて……」 一通り終わったのか、翔真が横に並んで、背後から抱きしめてきた。 「瑞希とエッチしてると、俺も瑞希に抱かれてる気分になる。気持ちよすぎるから、つい……」 瑞希は驚いて、体の向きをゆっくりと変える。 向かいあう形になって、翔真のはにかんだような目とぶつかった。 翔真がバスタオルをかけ直してくれる。そのまま抱きしめられた。 瑞希の唇に笑みが生まれる。 素直に嬉しいと思う。 抱かれるだけじゃない。自分も翔真を抱いている。そう思うとまた特別な愛しさが込みあげた。 「いいよ、翔真になら……」 自分がおかしいんじゃないかと思ったこともある。男の自分が男を好きになる。ましてや、男同士で体を繋ぐなんて絶対に変だ。でも、理性も何も及ばない領域で、翔真のことが愛しい。 翔真の肌の手触り、温もりも。 翔真だから明け透けもなくすべてをさらけ出せる。散々自問自答もしてきたけれど、明確な答えなんて見つからなかった。 翔真がいる。これからも翔真と共に歩みたい。それだけが事実であり、真実だ。 「瑞希、ずっと側にいてくれ。これから先、何があっても一生愛するって誓うから……」 「うん。俺も……翔真のこと、愛してる」 自分でも驚くほど素直に言葉が出た。 頭を撫でられて、唇にキスされる。 翔真と生きていくことに、不思議と疑いは持たなかった。過去も未来もなく現在(いま)が永遠なら、これから先も永遠が続くと信じたい。 二十歳になったばかりで、社会に出た経験もないくせに、血迷っていると言われるかもしれない。でも、自分にとって運命と呼べる出逢いが早かっただけであり、その相手がたまたま男だっただけだ。 ずっとそばに。そう望むのは翔真だけじゃない。瑞希も同じだ。 翔真の独占欲とそれに束縛されたい自分。引き合ってひとつのものになる。 「すっげぇ幸せだ」 翔真が泣き笑いみたいな顔になる。 瑞希も同じ顔になる。 くすぐったくて、甘い気持ち。 二人の間に満ちて溢れる。 そう、幸せ……。 あの夏の夜に愛し始めた。 そして。 永遠に君を愛す。 -- fin --

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