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第20話 Re:ゼロから始めるとんでも執事との新婚旅行③※R描写
儀式も、謁見も、商談も、無事に終わった。
宿に戻って、遅めの昼食を済ませ、部屋の引き戸を閉めた瞬間、緊張がふっと抜ける──はずだった。
「ふぅ……やっと終わったな。あとは風呂入って寝るだけ──」
言いかけたところで、背後から強く抱きしめられた。
「っ……レオ?」
「“仕事”が終わったので、やっと、恋人に戻ってもいいですよね?」
耳元で囁かれたその声は、さっきまでの丁寧で控えめな執事モードではなかった。
熱を孕んだ、低く甘い声音に、背筋が思わずゾクリとする。
「ちょっ、ちょっと待て!? 昨日はそんな雰囲気なかったろ!? 俺、油断してたんだけど!?」
「……無防備に寝てる兄さんを見ながら、ずっと我慢してましたよ」
「なっ……!?」
「謁見が控えてるのに、兄さんの足腰立たなくなったら困るじゃないですか」
耳元でさらっと言われて、思考が一瞬フリーズする。
「……だから、今日は。遠慮しません」
湯気に紛れて、湯のはぜる音が聞こえる。
けれどそれよりも耳に届くのは、服を剥がされるときの布擦れと──首筋を撫でるような吐息だった。
「ま、待て……! まだ風呂、入ってないから……っ」
「じゃあ一緒に入りましょう。俺が洗って差し上げます。……隅々まで」
「い、いや無理!! 無理だから!! そんなの、ホントに!!」
「……じゃあこのまま襲いますよ?」
「わかった!! やめろ!! 入るから! 今すぐ入るからッ!」
その瞬間、腕をぐいっと引き寄せられ、脱ぎかけの衣が滑り落ちる。
慌てて浴場へ向かえば、既にレオはさっと身軽に服を脱ぎ捨てていて──その背は、思わず目を逸らしたくなるほど、整っていた。いや、逸らしたいのに、逸らせなかった。
(やばい……やばい、どこ見てもアウトなやつ……!!)
しなやかな身体に、無駄のない筋肉が美しく浮かぶ。
一見スレンダーなのに、確かな力強さを感じる背中だった。
「ほら、兄さん。湯加減、ちょうどいいですよ」
逃げ場なんて、最初からなかった。
「ま、待てって……体洗ってから入るのが普通だろ……!?」
そう抗議する俺の手を、レオはぬるりと取って、湯の中に引き込む。
「……こっちの世界では、先に浸かってから洗うのが主流なんです」
「そ、それでも、順番ってあるだろっ……!」
言ってるそばから、レオの手が俺の腰のあたりを支えながら、そっと湯に沈めてくる。
部屋に備え付けの半露天風呂は、ぬるめの湯なのに、なぜか全身が火照って、──肌に触れる指先が、湯の温度よりも、ずっと熱い。
「リラックスしてください。……せっかくの新婚旅行なんですから」
「うええええぇっ!? これ、新婚旅行だったの!?!?」
レオは湯けむり越しに微笑んで、まるで当然のことのように言い切った。
「ええ。もちろん、最初からそのつもりでしたけど?」
「え、ええって……っ、ちょ、待て、聞いてない、俺聞いてない!!」
「兄さんが嫌とは言わなかったので、問題ないかと。外交任務は“ついで”です。
……兄さんを独り占めするための口実にすぎません」
「おまっ、ほんと、性格悪くなってない!? ていうか執事ってそういう職なの!?」
「兄さんは、俺にとってたった一人の人です。
だから、こうして“ふたりの時間”を作るためなら──どんな任務だって、利用します」
「……ほんと、そういうとこ……卑怯だぞ……」
そう言いながらも、自然と肩が力を抜いていた。
心まで、とろけるような湯に溶かされていく。レオの言葉が、体の芯まで染み込んでくるみたいで──
「……やっぱり、お前には敵わないな」
「光栄です、兄さん」
背後からぴたりと寄せられた身体。
泡立てた石鹸の香りと一緒に、しっとりとした指先が、肩から、腕へ、背中へ──撫でるように滑り落ちていく。
「や、やっぱ、自分で洗うから……っ、て、うわぁぁッ!!?」
「もう遅いですよ」
抵抗も、羞恥も、とうに通り越して、今やただの茹でリュシアンだった。
(ダメだ……背中にぴったり当たってる。耳元で息かかってる……!)
「……兄さんの肌、湯より柔らかいですね。……気持ちいい」
「そっ、そんな実況いらないってばっ!! も、もう、だめ……って、あッ!」
指が、泡と一緒に敏感なところをかすめる。
まるで“洗っている”のではなく、“味わっている”ような、そんな繊細な動き。
「そんなとこ洗わなくていいって言ってるのに……っ!」
背中にぴたりと重なるレオの体。彼の手が肩口から泡をすくって、そっと胸元に滑らせた瞬間、ビクリと身体が跳ねた。
「っ……!」
泡立てた石鹸の香りがふわりと鼻先をくすぐる。その香りの中に、レオの体温──指先が触れるたびに伝わってくる熱が、じんじんと残っている。
「兄さん、湯加減、熱すぎました?」
「ちがっ……や、ちょ、レオ……」
……あのさ、なんで、こんなに触れ方が優しいんだよ。くすぐったいのに、気持ちよくて、抵抗する気が抜けていく。
肩越しに見える白銀の瞳が、俺を映している。見つめ返すのも気恥ずかしくて、俺は少しだけ、顔を背けた。
でも、ふと思ってしまった。
……俺ばっか、されてるだけで、いいのか?
きゅっと唇を結んで、俺は意を決して、後ろを振り向いた。
「……レオ。俺、ばっかじゃ……不公平だろ」
「え?」
「……俺だって、おまえに、したい」
言葉に詰まりそうになりながら、なんとか伝えると、レオの目がふわっと揺れて──それから、静かに笑った。
恐る恐る、レオの肩に手を置く。
濡れた肌はあたたかくて、少し滑って、それだけで緊張してしまう。
でも俺は、ゆっくりと指先を這わせていった。
鎖骨から、胸元へ。指が泡に触れ、すべった。
その下の筋肉が微かに震えるのがわかって、俺の鼓動が跳ねる。
「……レオ、こういうの、好きか?」
「ええ。兄さんが触れてくれるなら、何でも」
そんなこと言われたら、ダメだって。
胸の奥が、きゅうっと音を立てて鳴りそうになる。
もう一度、指を這わせる。今度は、ゆっくりと乳首を撫でるように。
その瞬間、レオが息をのんだ音が聞こえた。
「……ここ、気持ちいいんだ?」
「……兄さんがしてくれるなら……全部、気持ちいいです」
なんだよそれ。
そんなの、俺のほうがどうにかなりそうじゃないか。
でも、やめられなかった。
次は、手のひらを広げて、ゆっくりと胸を撫でた。泡がぬるりとすべって、肌の温度がよりはっきりと伝わってくる。
そのまま腹筋へと手をすべらせ、くぼみに指を這わせていくと、レオの体がぴくりと震えた。
少し荒くなった呼吸が、目の前でわずかに上下する胸元に現れている。
視線を上げれば、レオの眉がほんの僅かに寄っていて──
それが、くすぐったさと快感の混じった反応だと分かって、胸の奥がじわりと熱くなった。
ああ、こんなレオの顔、はじめて見た。
顔を寄せ、そっと耳にくちづける。
「レオ、……気持ちいい?」
「っ……はい。もう、我慢できそうにありません」
吐息混じりの声に、喉が震える。
俺だって、限界が近い。なのに──
「もうちょっとだけ、触れててもいい?」
小さな声で聞くと、レオは目を閉じて、深く息を吐いた。
「兄さんの好きにしてください。……でも、あまり可愛い顔をしないでください。理性がもちません」
……知らないよ、そんなの。俺だって、もうどうにかなりそうだ。
もう一度、胸に触れる。今度は、ゆっくりと親指で円を描くように。
耳の裏にくちづけながら、もう片方の手で腰のくびれをなぞる。
「レオ、あったかいな……」
「兄さんの手が……優しすぎて、壊れそうです……」
不意に、レオの両腕が俺を抱きすくめた。ぐいと引き寄せられ、ぴたりと重なる。
「もう、いいですよね?」
「えっ、ちょっ、待て──!」
「もう無理です」
耳元でそう囁かれた瞬間、意識がとろけるような熱に包まれた。
レオに抱えられるようにして風呂を出て、身体を拭かれ、布団の上へと運ばれた時点で、もう俺の思考はふわふわと宙に浮いていた。
柔らかな布団。湯気に火照った身体。灯された行灯が、部屋に橙の揺らめきを落としている。まるで夢の中みたいだ。
「……大好き、レオ……」
「……兄さんっ」
その目に浮かぶ愛しさの濃さに、鼓動が跳ねた。
レオの手が肌へと触れるたび、熱の波が全身を駆け抜ける。
くちづけ、指先、吐息。どれもが、丁寧すぎるほど優しくて、俺はもう溺れる寸前だった。
「レオ……っ、もう……何も、考えられない……」
「じゃあ、考えなくていいです。全部、俺が感じさせますから」
熱を帯びた昂りを包み込むように撫でられた瞬間、ひくりと震えた。
レオの手は、ほんとうに、やらしいくらい優しくて、俺のなけなしの理性を絡め取っていく。
指先が、まるで朝露をすくうような繊細さで敏感なところを撫でるたび、身体がびくんと跳ねる。
──俺の奥の奥を、ゆっくりと解かしていく。
「っ……や、だ……そこ……っ」
「……我慢しなくていいですよ、兄さん。今は、俺だけを感じてて」
その手は、ゆっくりと、けれど確実に――俺の奥の震えるところへと辿り着く。
声が漏れる。震えが止まらない。もう、抗えない。
「レオ……もう……っ」
「……可愛い、兄さん。もっと聞かせて」
震える指先が、縋るようにレオの腕へと伸び、爪先が肌に痕を刻む。
甘く焼けつくような快楽が、幾重にも波紋を描きながら全身を駆け抜けた。
思考の端がかすれて、言葉にできない想いだけが、吐息に紛れて零れていく。
「……レオっ……」
切なげに呼んだ名を、彼はそっと抱きとめるように受け止めた。
そのまま額にくちづけを落とし、髪を優しく梳く指先で、俺の震えごと包み込んでくれる。
──まるで、愛そのものみたいな、触れ方だった。
それだけで、胸の奥がぎゅっと熱くなる。
(……愛されてる)
だけど。
だけど、このままじゃ、またされるばっかりだ。
「……待って。ちょ、ちょっとだけ……俺にも、やらせて……」
「……兄さん?」
「俺も……レオを、好きって伝えたい……。されるばっかじゃ、……イヤだ」
顔が火を吹きそうだった。けど、レオは一瞬だけ目を丸くして──それから、心底嬉しそうに微笑んだ。
「……はい。兄さんのしたいように、してください」
布団の上で、俺はそっとレオの肩を押して、仰向けにさせた。
レオは何も言わずにそれを受け入れる。
長い睫毛を伏せ、すこしだけ息を整えて、俺の方に手を差し伸べてくれた。
その手を取り、膝をついてまたがる。
ぎこちない動きだった。けど、逃げたくはなかった。
レオを好きだって気持ちを、ちゃんとこの手で伝えたくて──
「う、うまく……できるかわかんないけど……」
俺はゆっくりと腰を落としはじめる。
レオの手が、俺の太ももを支えるように添えられる。
呼吸を合わせるように、少しずつ、少しずつ、体が重なっていく感覚に、肌がびりびりと熱を帯びてくる。
「……っ、あ……、ん……っ」
ひとつになる感触。
奥まで届いた瞬間、視界が一瞬だけ白くなった。
体の奥が痺れるような、ぞくりとした甘さが広がっていく。
「兄さん……綺麗です……」
レオが息を飲むように呟く。
その声音が、まるで俺の全部を慈しんでいるみたいで、恥ずかしくて、でも嬉しくて、胸がいっぱいになる。
「……動く、ね……?」
自分でも信じられないほど小さな声だった。
でも、レオは黙って頷いてくれた。
俺は両手でレオの胸をそっと支え、ゆっくりと腰を揺らす。
「は……ぁっ……、ん、んん……っ」
きっと不格好だ。でもレオは一度も笑わない。
目を逸らさず、俺の動きをただ静かに受け止めてくれる。
名前を呼ばれるたび、愛しさが溢れて、腰の動きがどんどん本能的になっていく。
「れ、レオ……、レオ……だいすき……っ」
何度も繰り返す、熱っぽい言葉。
それだけで、どこか満たされていく気がした。
けれど、そのとき。
「……兄さん……っ、可愛すぎます。もう……限界です……!」
レオの手が、俺の腰をぐっと掴んだ。
次の瞬間、体勢が崩れて、視界がくるりと反転した。
「わ──、レオっ!?」
「ごめんなさい、兄さん。限界でした。もう、我慢できません……」
「……うん……、いいよ。レオなら……」
繋がったまま、レオの腕に抱かれているだけで、身体の奥がじんわりと熱を帯びていく。
それでも、心の中はふわふわしていて──
ゆっくりと揺れる彼の動きに合わせて、熱が深く、深く、染み込んでいくようで──思わず吐息が漏れた。
「……レオ……」
名前を呼ぶだけで、喉が甘く震えた。
触れられている場所だけじゃない。鼓動の奥、心の芯まで熱にほどけていく。
レオは、そっと俺の頬に手を添えたまま、指先で撫でるように触れ、
その眼差しで、すべてを包み込むように見つめてくる。
そして、何度も、ためらいなく、唇を重ねた。
浅く、深く、確かめるように。すくい取るようなキスが、俺の呼吸と心を盗んでいく。
「可愛い……全部、愛おしいです……兄さん……」
耳元で零れるような声に、思わず身体が跳ねた。
囁くたび、吐息が肌を撫でて、奥に火を灯していく。
肌と肌がぴたりと重なって、体温と鼓動が溶け合う。
レオの手が背中をなぞるたび、熱が一筋、背骨を伝って昇ってくる。
その優しさが、余計にくすぐったくて、くるしくなるほどに愛おしくて──。
「……レオ……好き……大好き……」
気持ちが抑えきれなくて、言葉が涙みたいにこぼれた。
レオはその全部を抱きしめて、口づけで、指先で、俺を確かめてくれる。
「俺も。兄さんを、何度だって──心の底から、愛しています」
触れるたびに、甘さと熱が、身体の奥に重なって落ちていく。
湯の余韻がまだ肌に残る朱に染まる帳のなかで、ふたりの息遣いが、世界のすべてになっていた。
まるで夢の中にいるような、でも確かな現実。
たったふたりの温度が、淡い灯りの中で静かに揺れていた。
時間さえ、とろけてしまうようだった。
この夜、俺たちはふたりで、もう一度、結ばれた。
そのまま深く、深く、繋がって。
溶けてしまいそうな甘さの中、ふたりだけの夜が、ふたりだけの愛で満たされていった。
外では、相変わらず橙色の空がゆれている。
黄昏の国の夜は、終わらない。
ふたりきりの、新婚の夜は──まだ、これからだ。
ぬくもりに包まれながら、俺たちはただ静かに抱き合っていた。
言葉は交わさずとも、肌と鼓動が確かに想いを伝えてくれる。
外の世界は、ずっと夕暮れのままだ。
黄昏の国では、時さえも歩みを緩めたように感じられる。
橙色の行灯が、ゆるやかに揺れて、部屋の中にやわらかな影を落としていた。
それはまるで、ふたりの時間にそっと寄り添うようで──。
レオの呼吸はすっかり落ち着いていて、俺の髪を優しく梳いてくれている。
このまま時間が止まってくれたらいいのに──そんなことを、ぼんやり思っていたそのとき。
「殿下〜、夕餉の準備が整ったニャ〜。おなか空いてる頃かニャ?」
スッ……
「……あっ……」
襖が静かに開き、モコの顔がちょこんとのぞいた。
そして、すぐに状況を察して──いや、むしろ全てを一瞬で理解して、
「…………」
何も言わず、そっと襖を閉じた。
そして、わざとらしく外から声だけが響いてきた。
「モコ、なにも見てないニャよ〜。な〜んにもニャ〜。
……ごゆっくりニャ〜〜〜〜〜♡」
(ぜんぶ見たんだな!?)
俺の全身が一気に熱を帯びる。
「……ど、どうしよう、レオ……ッ」
「問題ありません。次からは鍵をかけておきましょう」
「そこじゃない!!」
──こうして俺(Lv.1)と、ループで鍛え抜かれた執事(Lv.99)との、倭華の国での少し不思議で──いや、間違いなくとんでもなくて壮大な旅は、静かに幕を下ろした
翌日。
飛空艇の停泊所まで見送りに来てくれたモコと顔を合わせるのは、少し気まずかったけど──
「またいつでも遊びに来てニャ!」
そう言って差し出された手に、そっと触れた瞬間。
モコの肉球は、びっくりするくらい柔らかくて、どこまでも優しかった。
飛空艇がゆっくりと空へと浮かび上がると、それにぴたりと並ぶように、巨大な影が空を覆った。
「え……待って、あれって……ドラゴン? しかもサイズ、明らかに異常じゃない!? あれ絶対レッドドレイクか、その辺の伝説級のやつだよね!? “空の支配者”って呼ばれてる奴だろ!?」
「はい、兄さんの安全確保のために召喚しました。空の支配者は、兄さんの道を守ります」
「いやいやいや!? ていうか、召喚獣、いくつ持ってるんだよ!? 常に十体くらい控えてんの!? 俺が手に入れられるやつ、まだ残ってんの!? ねぇ、教えてよ!」
「……兄さんは、俺が守ります。戦う必要なんてありませんよ」
そう言って、隣でそっと手を重ねてくるレオの指は、いつもより優しくて、あたたかかった。
そのぬくもりが、俺の中の迷いや弱さを、すっと溶かしていく。
「……ああ、もう。ずるいな」
「兄さんは、弱いままでいてください。強くて、可愛かったら……無駄に恋敵が増えるだけですから」
「そんな理由で止められるの!?」
「もちろんです。本気ですよ」
ああ、この目は本気だ。
でも……俺だって、譲れない想いくらいある。
「……やだ。俺、絶対に強くなる」
「……兄さん?」
「守られてばかりじゃ、嫌なんだ。俺だってお前を守りたい。お前が──
……世界で一番、好きだから」
その言葉に、レオの瞳がわずかに揺れた。
そして、目を細めると、そっと俺の指を握り返す。
「……仕方ありませんね。では、どこまでもお供します。世界で一番──いえ、“世界そのもの”と引き換えになったとしても。
それでも俺は、兄さんが一番、大切ですから」
空の支配者と呼ばれる召喚獣が、飛空艇のすぐそばを並走する。
雲の切れ間から差す光の道を、俺たちはゆっくりと進んでいた。
橙に染まる空。遥か遠くに霞む山々。
世界がこんなにも広く、美しいと知ったのは──隣に、この人がいたからだ。
飛空艇は音もなく、夕映えの空をゆく。
変わらずそばにあるレオの体温だけが、俺の胸の中で、確かなものとして灯り続けていた。
──こうして、“ふたりの物語”は、静かに、そして確かに、次の章へと進んでいく。
次は、ふたりだけで──。
fin.
***
これにて【異母弟のヤンデレ愛、ループで加速中〜何度殺されても、俺はお前との真エンドを目指す〜】は完結となります。
ご拝読、誠にありがとうございました。
たもゆ
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