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高まる熱②
連れていかれた先は体育倉庫だった。ごろりとマットの上に投げ出される。
(逃げなきゃ)
もがいていると背中に蹴りを入れられた。肺が圧迫されて息がつまる。暴力は脅しとなって、抵抗する気力を奪う。
「お前、足、速いな。俺たちを走らせやがってよ」
「こいつたまんねえなあ。俺もうガッチガチだわ」
「その顔をもっと良く見せろよ。きれいなツラしやがって」
屈みこんできた生徒が雪弥の顔を覗き込んで、「ええ?」と後ろに飛びのいた。
「お、お前……。と、藤堂?」
生徒らの動きが固まった。
「藤堂って、あの?」
生徒らが雪弥の襟首を乱暴に引っ張り上げた。電灯の明かりに顔を向かせる。
「え、マジで? 藤堂かよ」
「このすかした顔は元生徒会長さんで間違いねえな」
「あんた、Ωだったの?」
「ぎゃはは、マジで? ウケるわ!」
(違う)
雪弥は首を横に振る。「解放しろ」と、もがいて指図する。
雪弥に乱暴を働いているのは三年のαだった。だが、SSクラスの雪弥と同じクラスになったことのない下位の生徒だった。名前は知っているが会話をした記憶もない。
(お前ら、俺にこんな真似してタダで済むと思うなよ)
雪弥はにらみつける。
生徒らは顔を見合わせる。ゴクリとツバを飲み込んで互いに頷く。
「すげえな、すげえ興奮するわ」
「藤堂を犯せるって」
「ぐちゃぐちゃにしてやるわ、このいけすかないツラを」
生徒は雪弥の顔を抑え込んで、べろりと舐めてきた。べろべろと顔中を舐め回される。
「はああ、興奮する、たまんねえ」
「あんた、藤堂さんかよ、はああ、すげえな、すげえくるわ」
仰向けに倒されると、ベルトを外すカチャカチャという音が聞こえてきた。その間も太ももに腰を擦り付けられる。
(こ、こいつら、俺を、お、犯す気か?)
雪弥は逃げようともがいた。
(いやだ、やめろ)
しかし、抑えられて逃げようもない。
上に乗ってこようとする奴の腹を何とか膝蹴りする。寸前で交わされて、体をマットに押し付けられた。
眼前で振り上げられた拳に、口の中を怪我しないように奥歯を強く噛みしめた。
(怖い……)
暴力にさらされることがこれほどに恐ろしいものだとは思っていなかった。何かあっても強い威圧で相手を伸せればいいだけだった。
(怖い。暴力が怖い……)
眼前に振り下ろされる拳を避けることに注力する。涙に滲む視界で拳を必死に捉えた。一撃目は雪弥の側頭を擦ったが大きなダメージを与えなかった。
すでにスラックスもアンダーも引き下げられている。足裏を腹に押さえつけられて尻が丸出しになっている。
(いやだ、やめろ!)
猛然と首を横に振れば、髪を掴まれて頭を引き上げられた。
「いつも偉そうなあんたはこれから俺たちに惨めに犯されんだよ?」
穴をヌラリと指で撫で上げられる。ブルっ、と全身に震えが走る。
(いやだ、やめろ)
それは殴られるよりも恐ろしいことのように思えた。涙が目にあふれてくる。
「すげえな、濡れ方まんこじゃん。きれいなケツ穴だわ。ひょっとして俺たちが初めてか? 俺たちが藤堂をメスにすんのか。すげえな、すげえ興奮するわ」
「そのきれいなツラ見ながら突っこんでやって、最後に顔にぶっかけてやんよ」
暴漢はジャージを降ろして雪弥に当ててきた。暴漢のものは硬い。それを感じて雪弥は恐怖に陥った。
(いやだっ………!)
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