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ゼロアタック②

(ゼロアタック……?) ―――事例では、ターゲットαは一様に、ファーストアタック以前の体調変化を自覚していない。 ―――しかしながら、αからΩへの肉体上の変化が、ファーストアタックからセカンドアタックまでの短期間で起きるとは考えられないことも、ゼロアタックの存在を裏付ける。 雪弥にもファーストアタックを受けるまでこれといった体調の変化はなかった。 (いや、待てよ。あの形容しがたい夢。体の中をかき混ぜられるような。あれはファーストアタックの随分以前からあった。そういえば、Ω化以降、見ていない) そこから先は秀人の考察となる。 ―――ゼロアタックはターゲットαに気付かれない程度の、微弱なアタックであることは間違いない。 ―――そして、微弱なアタックであれば、時間をかけて積み上げなければ効果は出ない。 ―――数か月、或いは数年、一人のαがターゲットαのすぐそばにいて、微弱なアタックをかけ続ける。これがゼロアタックの正体なのではないか。 雪弥が大山を認識したのは中1、大山が高1の冬だった。奇人変人の大山とは強烈な出会い方をした。その後、大山は留年を続け、六年間も同じ構内で過ごしたことになる。 (まさか留年はアタックのため?) 直情型で猪突猛進の大山の行動として似つかわしくはない。 しかし、もう雪弥には何もわからなくなっていた。大山がどんな人物だったのか、今や、あやふやでつかみどころがない。 秀人の考察は続く。 ―――ゼロアタックを仕掛けたαをゼロαとすれば、ゼロαのターゲットαへの執着は目を見張るものがある。 ―――まるでΩ化は、ゼロαのターゲットαに向ける、呪いである。 雪弥はぶるっと震えた。 最後に秀人は結論付けている。 ―――ゼロαは数年にわたりゼロアタックを仕掛けたのちに、ファーストアタック、セカンドアタックが起きるように仕向ける。これがΩ化の全貌に思われる。 ―――執拗にアタックをかけ続けたゼロαは、その後の二段階のアタックをもたらす『装置』を用意すればいいだけとなる。 ―――Ω化の解除の鍵もゼロαにあるはずだ。 (ゼロα。大山ならば、俺をαに戻せる?) そこにノックの音がして、雪弥は飛び上がった。ファイルをベッドの下に投げ入れて、ドアの鍵を開ける。 ドアの向こうには今度こそ天陽がいた。

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