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第72話 赤髪の聖女⑪ ※R描写あり
アヴィは俺を抱き上げ、ふわりとベッドへ降ろす。
そして、自分の身体を覆っていた中途半端にはだけた騎士服を、掴んだ瞬間――まるで邪魔な皮を剥ぐように、一気に脱ぎ捨てた。
視界に飛び込んでくるのは、鍛え抜かれた胸筋。
続くように、きれいに割れた腹筋が滑らかな線を描く。
そして視線が、そのさらに下――
どうしようもなく雄で、アヴィの欲をそのまま形にした場所へと吸い寄せられてしまう。
震える吐息と共に視線を逸らそうとするよりも速く、アヴィの熱い掌が俺の顎をしっかり固定した。
「見てください……ご主人様」
命令というより、切実な懇願の色を帯びた声。琥珀の瞳が狂おしいほどの渇望で俺を射抜く。その視線は、ただ見てほしいだけではない。「僕は、貴方にこれだけ欲情しています」と、全身で訴えていた。
「……僕に触ってください」
俺に覆いかぶさりながら、耳元で吐かれた低い声に、恥ずかしさも、理性も、全部吹き飛んだ。
俺は指をアヴィの腹筋の縦のラインに沿わせ、腰骨に沿って滑らせる。
背中に腕を回すと、腰の下あたりでいつもは服の下に隠れている、アヴィの柔らかい尻尾が指先に触れた。
ふわりとした毛の感触に触れるたび、彼の体が小さく反応して震えるのが手に伝わる。その微かな動きに、俺の心も自然と高鳴り、思わず触れる手に力が入る。
そのまま下腹に手を潜り込ませ、アヴィの熱芯に触れた。
アヴィの呼吸は荒くなり、腰が少しだけ動くのを感じる。俺はその動きを受け止めるように手を動かし、彼の体の反応を楽しんだ。
「……っ、は……」
甘い吐息が漏れるたびに、俺は唇を首筋や肩に押し当て、軽く舌先で撫でる。
アヴィの琥珀の瞳に映る俺の顔は、きっと欲望に満ちていた。
「ご主人様……もっと……ください」
囁きに応え、俺はさらに大胆に、彼の滾った熱源を弄 った。腰が僅かに浮き上がり、俺の掌に擦り付けるように動く。
熱い吐息を溢しながら、アヴィの唇が俺の口を塞いだ。浅く、深く、角度を変えながら何度も重なり、舌先が絡み合う。
唇と唇が重なるたび、頭の中の理性は霞んでいき、残るのはただ、アヴィに触れ、応えたいという本能だけだった。
けれど、突如として耳元で落とされた低い囁きに、脳みそが一瞬でショートした。
「……ご主人様。僕の上に、逆向きで乗ってくれませんか?」
その言葉が、頭の中で警報みたいに鳴り響き、体温が一気に吹き上がる。
あまりにも直接的なのに、妙に丁寧で、優雅に包まれた“お願い”。
(……は!? 逆向き!?
それってアレか……? AVでしか見たことないやつか!?)
アヴィが俺の上に覆いかぶさったまま、ふいに体をずらした。耳元で柔らかい毛がかすめ、次の瞬間――
「……っわ!」
視界がふっと横に傾く。
アヴィが俺の体ごと抱え込んで、横に“ゴロン”と優しく反転したのだ。
気づけば俺は、アヴィの胸の上に跨る形で対面になっていた。
(……これ……完全に……逃げられないやつじゃねぇか……!)
逃げたいわけじゃない。ただ、恥ずかしすぎて思考が追いつかないだけだった。
アヴィはそっと俺の手首を取り、ためらうように、でも確かに――指先へキスを落とす。
俺を見上げる瞳が、期待でわずかに潤んでいた。
(ああ、もう……そんな目をされたら、“無理”なんて言えるわけないだろ)
喉の奥で小さく息を呑み、俺はアヴィの胸元に手を置いた。彼の心臓がどくっと跳ねるのが指先に伝わる。
俺は、覚悟を決めてゆっくりと体勢を変えた。
逆向きになる瞬間、羞恥が胃の奥をぎゅっと掴んでくる。
(うわ、やば……! めちゃくちゃ恥ずかしいなコレ……!!)
おずおずとアヴィの膝に手を置き、ぐらつく身体を支えながら向きを変えると——
背後で、アヴィが息を呑む気配がはっきりと伝わった。
その低い呼吸ひとつだけで、さらに顔が熱くなる。
太腿にアヴィの大きな手が触れる。
触れただけなのに、俺の腰がびくっと跳ねた。
「……いい眺めです」
「ば、バカ……! 見るな……!」
「無理です。全部見せてください」
背中越しに、アヴィの視線が俺の尻に突き刺さっているのがヒシヒシと伝わり、顔から火が出そうだった。
しかもこの体勢じゃ、俺の“大事なところ”まで、全部アヴィの真正面にさらされている。
意識した瞬間、羞恥で喉が詰まりそうになった。
アヴィの吐息が脚の間を掠めるたび、変な声が出そうになるのを必死で堪えた。喉がカラカラに乾く。
そんな俺の心中なんかお構いなしに、アヴィの大きな手がそっと俺の腰を掴んだ。
びくりと跳ねた俺の反応を楽しむように、その手がゆっくりと下へ滑っていく。
指先が、尻の境目をかすめるように触れた瞬間、背筋に電流が走った。
「ひぅっ……!」
短い悲鳴が漏れて、慌てて口を噤む。でも遅かった。背後でアヴィがくすりと笑う気配がする。
背後からの支配的な快感に思わず身を捩らされたけれど——それでも、このままされっぱなしでいられるほど俺は従順じゃない。
息を呑みながら、俺もそっと“反撃”をにじませた。目の前にはアヴィの熱芯がそそり立っている。
ひとつ息を吸い込み、濡れそぼった先端へと唇を寄せた。舌先で鈴口をくすぐるように舐めあげると、背後のアヴィがくぐもった声を漏らした。
その反応に少しだけ優越感を覚えつつ、俺は更に大胆に口を開け、硬く張り詰めた陰茎を咥え込む。
喉奥まで届きそうな質量に息苦しさを覚えながらも、歯を立てないように注意して舌全体で包み込むように愛撫する。
「はぁ……っふ……」
自分でも驚くほど淫靡な吐息が漏れた。同時にアヴィの長い指が、俺の愚息を翫 ぶように蠢く。先走りを潤滑油代わりにしたのか、ぬるりとした感触が後ろから与えられたかと思うと、アヴィの指がゆっくりと内壁に侵入してきた。
「んんんっ!」
前と後ろを同時に攻められ、根元を握っていた指先に、思わずギュッと力が入った。
(……ちょ、それはズルいだろ……!)
頭の中でそんな負けん気が芽生え、俺は口を窄めて吸い上げながら舌を躍らせた。アヴィのものがビクンと跳ね、先端から溢れ出した透明な露が俺の舌先を刺激する。その味を確かめるように味わいながら更に深く咥え込む。喉の奥まで突き当たる異物感に涙が滲んだが止められない。
背後ではアヴィの指が二本、三本と増やされ、内壁を解すように抽送している。特に前立腺のある辺りを執拗に擦られると意識が飛びそうなほどの快楽が駆け抜けた。
自分の意思とは関係なく体が震え、腰が勝手に揺れてしまう。
「ぁ……んむぅっ……!」
アヴィの興奮した息遣いを脚の間に感じると、咥えたまま喘ぐしかできない俺の顔を、まるで鏡越しに見られているかのような感覚になった。
丁寧に陰嚢や会陰まで舌と唇で愛撫されて、その度に全身が粟立つ。こんな体勢だからこそ得られる密着感と没入感にどんどん溺れていく自分がいる。
(あぁ……これ……ヤバい……)
今までだってアヴィとは散々やらしいことをしてきた。口でしたりされたり、挿入されることだって慣れたもの……のはずなのに。
この体勢だとアヴィの熱い息が股間にかかるし、視線だけで焼かれそうだし、何より自分の大事なとこを全部差し出してるみたいな感覚が尋常じゃない。
羞恥で気が狂いそうだ。なのに――
(なんで……こんなに気持ちいいんだよ……!)
そんなことを考えながら夢中でアヴィを舐め上げていると、不意に彼が指を引き抜いて、俺の尻を拡げるように掴み上げた。驚いて口からアヴィ自身を離しそうになった刹那──
「んっ!?」
後孔を指の代わりにアヴィの舌が抉った。うしろをグリグリ舐められながら、同時に掌で愚息を激しく上下に扱かれると、強烈な快感が走る。全身が痺れ、膝がガクンと折れそうになった。
「アッ……アヴィっ……それヤバいって……!」
抗議の声は途中で途切れてしまう。アヴィの指は休むことなく執拗に弱点を責め続け――そのうえ、こんな体勢だから逃げ場がない。
「あっ……ああぁっ!」
もはや目の前にそそり立つアヴィの逸物を見る余裕さえ失われ、四つ這いでシーツにしがみつきながら背中を仰け反らせる。
頭の中は真っ白だった。
「ひぅっ……イクッ……もう……!」
全身の血が沸騰しそうなほど熱く滾る。
勝手に浮きかけた腰を、アヴィの手が逃さないように支え込んだ。彼の指が最後の一撃を与えるべく強く擦り上げた瞬間。
「──ッ!!」
声にならない悲鳴とともに視界が弾けた。駆け上がる快楽の奔流。俺はアヴィの上に跨ったまま大きく背を反らせ──
熱い迸りがアヴィの引き締まった腹筋から下腹部を白く汚していく。その様をぼんやり見下ろしながら俺は呆然としていた。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
荒い息が、掠れるように口から洩れ続ける。
身体の芯までまだ甘い痺れが絡みついて離れず、力が入らない。
「ふふ……ありがとうございます。少し、はしゃぎ過ぎてしまいましたね……」
視界の隅で、アヴィがかすかに口元をゆるめた。
だが俺には、その表情を確かめる余裕すらない。
全身がまだアヴィの熱に支配されていて、震える息をただ必死に整えることしかできなかった。
「今度は――僕の我儘に付き合ってくれた、お礼をさせてください」
低く甘い声が耳に落ちた瞬間、背筋がぞくりと震えた。アヴィの上で脱力していた俺の身体が、突然ふわりと宙に浮く。
視界が反転し、背中に触れたシーツの冷たさと、覆いかぶさるアヴィの体温が交互に押し寄せる。
息を整える間もなく、脚が持ち上げられ──次の瞬間だった。
「アヴィ……まっ──」
制止の声は途中で遮られた。熱い屹立が一気に最奥まで押し込まれたのだ。息が止まりそうな衝撃に背中が弓なりにしなる。
「っ……うあぁっ!」
悲鳴に近い声が喉から迸る。達したばかりの敏感な内壁を強引に割り開かれる感覚。アヴィは逃げようとする俺の腰をしっかりと掴み、さらに奥深くへと突き進んできた。
「ご主人様……受け取ってください……!」
荒い呼吸の合間に告げられた言葉にゾクリとした。見上げればアヴィの顔がすぐそこにある。額に汗を浮かべ、眉間に刻まれた深い皺。いつも穏やかに微笑んでいる男とは別人のような獰猛な表情だった。
「……僕の気持ちを……全部……!」
「あ……っ…ああッ」
掠れた声とともに腰を打ち付けられる。肌と肌がぶつかる乾いた音が部屋に響いた。最初はゆっくりと探るような動きが徐々に加速し、リズムを刻む。
「あっ……! んんっ……!」
声を抑えきれず喘ぎながらアヴィの首にしがみつく。アヴィは俺の背中を強く抱きしめ返してきた。互いの体温と鼓動が直接伝わり合い、境界線が曖昧になっていく。
「ご主人様……っ、愛しています」
耳元で囁かれる言葉に羞恥が湧き上がる。自分でもわかっていた。アヴィを拒むどころか離したくないというように締め付けてしまっているのだ。その事実を認識した瞬間、またしても背筋を快感が駆け上った。
「これの、どこが……“お礼”なんだよぉ……っ!」
悪態をつくつもりが言葉尻は甘えた響きを帯びてしまった。それがおかしかったのか、アヴィが小さく笑い声を漏らす。
「まだ、足りないですか? ……では、もっと激しくしますね……っ!」
そう言って彼は腰の動きを早めた。「違う」と言いたいのに、それは喉の奥で甘い喘ぎにしかならなかった。パンパンと激しい抽送の音が響くたびに俺の視界が明滅する。内側を擦られるたびに全身が快楽に震え、結合部から卑猥な水音が漏れた。
「ひぁっ! だからそこダメだってッ……!」
前立腺を突かれた瞬間、これまで以上の衝撃が襲ってきた。反射的に締め付けるとアヴィが呻き声を漏らす。互いに限界が近いのは明らかだった。
切羽詰まった喘ぎとともにアヴィの動きが一層激しくなる。俺は必死に彼の肩に爪を立てながら絶頂へと駆け上がった。頭の中が真っ白になり、全ての神経が結合部に集中していく。
「――ッ、アァッ!」
「ご主人様……っ!」
ほぼ同時の叫びと共に世界が弾けた。
熱い波が体内を満たしても、さすがに俺はもう空っぽで、放てるモノがなかったけれど。
お互いに最後の一滴まで注ぎ込むように長く深い痙攣だけが続いた。
荒い息遣いだけが響く部屋の中で、ようやく身体の奥に残っていた熱が少しずつ静まっていく。
アヴィは力が抜けたように俺の上へ倒れ込んだ。胸元に落ちる彼の体重は心地よい重みで、触れ合ったところからお互いの鼓動がじんわり伝わってくる。
「……大丈夫、ですか……?」
耳元で問われても返事をする体力が残っていなくて、俺はただ小さく頷くことしかできなかった。アヴィの掌が俺の髪をゆっくり梳くたび、まだどこかじんじん疼く身体がようやく落ち着きを取り戻していく。
「……ご主人様。僕、今……誰よりも幸せです」
低く掠れた声が肌に触れるほど近くで囁かれ、くすぐったいほどの熱が胸の奥からこぼれた。恥ずかしいのに、嫌じゃない。むしろ同じ気持ちでいる自分に気づいて、余計に頬が熱くなる。
アヴィが俺の頬にそっと唇を寄せる。触れたか触れないかの浅いキス。
逃げないようにするみたいに、指が俺の腰に回され、ほんの少しだけ引き寄せられた。
疲れ果てた末に、こんな甘やかな触れ方をされると意識がじんわり溶けていく。眠気が俺をさらおうとする中、ただひとつだけ確かなのは――
この温もりの中で眠るなら、きっと幸せだということだった。
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