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第71話 赤髪の聖女⑩ ※R描写あり

 俺の思考が追いつくより早く、アヴィの体が覆いかぶさってきた。  柔らかなソファに仰向けになった俺の腰へ、容赦のない熱が落ちる。  逃げ場なんて、最初から与える気がない。  「……ご主人様」  低く湿った声が耳元に落ちた瞬間、  首筋の産毛が総立ちになる。  コルセットを引き裂いたことで、アヴィの理性はすでに限界まで摩耗している。  焦がれるような熱気と匂いが、呼吸するたび胸に満ちていく。  「……ッ、アヴィ……!」  混乱が頭を掻き乱すが、アヴィの手は止まらない。  はだけた聖女服の襟元に指を滑り込ませ、  残った布地を繊細に――けれど焦りを隠せない手つきで払い除けていく。  「ちょ……待てって!」  必死の抵抗も、アヴィの瞳には一滴も届かない。  開ききった瞳孔の奥、琥珀の光はただ俺だけを捉え、  逃げようとする仕草すら、独占欲を煽る燃料にしてしまう。  緩んだ衣の隙間から覗いた鎖骨に、温かい舌が触れた。湿った感触に、思わず身体がびくりと跳ねる。  「……っ、あ……!」  その反応を逃さず、アヴィは深く息を吸い込んだ。  喉の奥で、抑えきれない熱が低く唸る。  さらに、アヴィの膝が俺の両脚の間に力強く割り込んでくる。  鍛え抜かれた脚の重みと体格で押さえ込まれると、  正直――ビクともしない。  無意識に逃げようと腰を捻った瞬間、  アヴィの腕が俺のウエストを捕らえ、剥き出しの肌を抱き寄せた。  熱を帯びた呼吸が胸の上に落ちる。  その強さは、まるで「もう離す気はありません」と告げているようだった。  「……逃げないでください」  その囁きは、祈りのように静かで――獣の熱を孕んでいた。次の瞬間、アヴィの唇が俺の口を強く塞ぐ。  「んっ……!」  声を上げる隙すら与えられず、熱い唇が深く沈み込んでくる。  触れ合っただけのはずの口づけは、すぐに形を変えて、舌の奥まで奪い尽くす“支配”へと変貌した。  甘いとか優しいとか、そんなものじゃない。  息をするだけで、胸が苦しくなるほどの熱と力がぶつかってくる。  舌が絡むたび、俺の頭の中に残っていた理性の欠片が、ひとつ、またひとつと白く溶け落ちていった。  「……っ、アヴィ……っ」  かろうじて漏れた声は、すぐにキスの中へ飲み込まれる。  そして、腰に引っかかっていた聖女服の布地を、まるで邪魔な包装紙でも扱うかのように、器用に、だが容赦なく俺の体から剥ぎ取っていく。  冷たい空気が、露わになった肌をなぞっていき、ゾクリと震えが走った。  柔らかなソファの上で――  偽りの聖女の衣装だけが次々と失われ、残された俺の“男の身体”が、アヴィの視線と熱にさらされる。  その瞬間、  アヴィの呼吸が明らかに深く、低く変わった。  呼吸すら奪われるようなキスの狭間で、アヴィの指先が鎖骨を滑り、胸へと降りていく。その長い指が乳首に触れると、反射的に腰が跳ねた。  「んぅ……ッ!」  喘ぎを封じるように、アヴィの唇が深く押し当てられた。その口づけは、唾液を奪い合う湿った音を立てながら、嵐のように激しく俺を呑み込んでいく。  「……っ、は……!」  酸素が追いつかない。  肺が悲鳴を上げても、アヴィは一切離れようとしない。  呼吸が苦しくて、自然と身体が逃げようとする。けれど、心は嘘をつかない。  俺も“愛している”を伝えるように。  彼の気持ちに、必死に応えようとしていた。  アヴィの騎士服のボタンに指先をかけ、ひとつずつ外していく。唇に絡む彼の舌を感じながら、裾から指を滑り込ませる。熱い素肌に触れ、体温を確かめるように撫でる指先の感触に、アヴィは一瞬くぐもった吐息を漏らした。  「……ご主人様……っ」  その囁きだけで、全身の血が沸き立つ。俺の体は、彼を求める感覚に震え、アヴィの舌の動きひとつで腰が浮きそうになった。  互いの体が逃げ場なく絡み合い、触れられてもいないところまで熱くなっていくのが、自分でもわかってしまう。  アヴィの左手が下腹へと滑り落ち、下衣を一気に引きずり下ろした。すでに硬くなった愚息が冷気に晒され、羞恥で顔が火照る。  アヴィの長い垂れ耳が俺の太腿にひらりと触れた。  ふわふわの柔らかい毛先が、太腿の内側をすり抜けるたび、くすぐったくて思わず身体がビクッと反応してしまう。  アヴィは恍惚に満ちた瞳を離さず、焦らすように太腿にゆっくりと唇を這わせた。  「……んっ……」   思わず小さな声を漏らすと、アヴィは微かに笑い、さらに熱を籠めて指先を滑らせてくる。  「……待って、ソファ……汚れる、から」  「大丈夫です」  そう言って彼は俺の膝を抱え込み、ソファに固定した。抵抗の術を失った俺の下半身へ、アヴィの唇が滑り込む。  「ひぁっ……!」  彼の唇が俺の最も弱い部分を咥えた瞬間、全身に痺れるような快感が走る。喉の奥から洩れた声が情けなく響き渡った。  喘ぎ声にすらなっていない吐息が唇の隙間から零れ落ちる。アヴィはその反応を見逃さず、さらに攻め立てるように舌で先端を執拗に愛撫し続けた。  溢れる先走りすら、愛おしむように、舌で舐め取られ、俺は最早耐えられなくなっていた。  熱い粘膜に包まれる感覚に、理性が崩壊していく。アヴィの唇が上下するたび、背筋を走る電流が思考を白く灼いた。  「あ……んっ……アヴィ……」  喉の奥が勝手に震えて、自分のとは思えないほどの甘い声が洩れる。アヴィの指先は根元を優しく握り、親指の腹で裏筋をなぞり上げた。舌先は鈴口を抉るように動き、湿った水音が耳孔を犯していく。  「……っふ……あっ……!」  腰が浮き上がるほどの愉悦に悶える。だが、ソファに縫い止められた両脚は微動だにせず、身体中の神経が一点に集中していた。高まる熱を、もはや抑えることはできなかった。  「も……ヤバい……イクから……やめて……」  涙混じりの声で訴えるも、アヴィの動きは止まらない。熱い舌と粘膜で全てを搾り取るように吸い付かれ、まるで食べられてるようだと、錯覚さえ起こしかけた――その瞬間、閃光が弾けた。  「ひっ……あああッ!!」  白濁が迸る。アヴィは俺の愚息を深く咥えたまま、それを喉奥で受け止め、飲み干していく。脈動が鎮まるまで舌で清められ、どうしようもない羞恥とほんの少しの安堵が押し寄せる。俺はただ肩で息を繰り返すしかなかった。  「……んなもん飲むなよ……きたねぇだろ」  辛うじてそんな悪態を、掠れた声で吐き出す。  反射的に顔を覆おうとした腕は、アヴィの手にあっさり掴まれた。  「汚くないです」  アヴィの瞳は、まだ満たしきれない飢えを孕んだまま、俺の一挙一動を舐め尽くすように追ってくる。  その奥で渦巻いているのは、理性じゃなくて――俺だけを求める欲だった。  「どんなところも……。ここだって」  囁きながら、アヴィの指が後孔をゆっくりとなぞる。  触れられた途端、腰が震え、情けないほど大きく息が漏れた。  「……ベッド、行きましょうか」  耳元に落ちた熱い吐息が、背筋の奥までゾクリと震わせる。俺は抗えず、小さく頷いた。

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