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第9話
何だ、今日のコイツは。
「はい、坂木さん。」
「...ん。」
丁寧にグラスを渡されワインを注ぐ。
加えてつまみのチーズは綺麗に封を開け皿に盛る。
「あ、そこ尻が痛いよな。」
「二ノ宮くん」
クッションを手渡そうとしてくるのを思わず制すれば「何?」と首を傾げている。
そのキョトンとした表情に苦笑してしまう。
その顔、悪くないんだよ。
「今日のその態度は何だ?いつもと違ってて、その、」
戸惑っている、とは言いづらく言葉を濁す。
するとパアッと嬉しそうに笑い、尻尾を振るのが見えた。
「俺ねガツガツするの止めたんだ。」
「は?」
言われた意味が分からない。
止めた?何を?
「坂木さん、俺ねただのヤりたがりじゃないから。だから怖がらないでください。」
「はぁあ?」
このバカは何を言っている?
怖がる?僕が?このガキを?
「ちゃんと大切にする。いつか坂木さんが身を委ねても良いって思えるように。」
「......」
「恋人だからな。」
「...ちょっと待て。」
「うん?」
キラキラとした笑顔で見つめてくる。
その笑顔は悪くないが、言われた内容は聞き捨てならない。
「僕が、君を怖がっててセックスしないとでも?」
「うん。ごめんな、俺ガツガツして」
「こんの、ど阿呆うがぁ!!」
「うぇえ!?」
思わず立ち上がって怒鳴り付けてしまう。
「誰が君なんか怖がるか!」
「え、だって!あれからさせてくれないじゃんか!」
「っ、」
見上げながら抗議してくるのに言葉が出ない。
確かにあれからしてない。
してはいないが、その理由は怖いからじゃない。
「だから怖いのかなって、俺なりに悩んでだな!」
「違う!」
「うぇえ!?」
「...よく分かった。今からセックスしよう。」
「え、え?」
自らのシャツのボタンに指をかける。
一つ、また一つと外していけば、二ノ宮くんの喉が大きく上下するのが分かった。
「坂木さ」
「ただし、」
「え?」
肩を押し、床の上に押し倒す。
その体に馬乗りになり見下ろすと、ゆっくりと続けた。
「今日は僕が突っ込む。」
「は?え?」
「君の下手くそなセックスより気持ちよくしてやる。しっかり学べ。」
「え、ちょ、ンンッ!」
慌てて開かれる口をキスで塞ぐ。
ジタバタと暴れる体を力ずくで押さえ込み、舌を差し込んだ。
ふざけんな。
抱かれる側の気持ちをこのガキにも教えてやる。
男のプライド
それを簡単に捨てて肌を重ねられるほど、僕は若くないんだよ。
だいたい、まだ恋人と認めたわけじゃない。
ただ...
「ン、は...坂木さん、」
このバカで生意気なガキが、可愛いと感じるだけだー。
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