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第8話

「なぁ、相手をその気にさせるにはどうしたら良いんだ?」 「ブハッ!」 「え、大丈夫か?」 「だ、大丈夫...何だよ急に」 仕事帰りに寄った居酒屋のカウンター、そこに手をついて橋本がこちらを見る。 ゲホゲホと咳ながら問われ、そんなに噎せるような事を聞いたかと不思議に思う。 「だってさ、付き合ってるのにそういう雰囲気ならないんだよ。最初に3発もヤったのがダメだったかな?」 「ブハッ!」 「ちょ、大丈夫か?」 またもや吹き出す友人の背中を軽く叩く。 それに「大丈夫だから」と涙目で答えると橋本は手元にあった水を飲み干した。 「お前、それ相手の女の子バージンだったんじゃないだろうな。」 ジロリと睨まれウッと言葉が詰まった。 バージン 2回目のセックスだったがお互い1回目を覚えていないのだから、あれが初めてだったようなものだ。 「...そう、かも?」 「バカが!初めての女の子に3回もやりゃ嫌に決まってんだろ!」 「でもけっこうノリノリだったぞ!?」 「ブハッ!...そりゃ、お前が夢中になりすぎて相手の反応読み間違えたんだよ!このバカが!!」 「う"」 ハッキリと言い切られて言い返せない。 確かに夢中になった。 ちゃんとヤれたことが嬉しくて、気持ちよくて。 何より坂木さんが綺麗で、汗ばむ身体や噛み殺した声にどうしようもなく昂った。 「お前ほんとバカ。そりゃ怖いんだよ。」 「ど、どうしたら良いんだ?」 バカを連呼されることに言い返すこともできずオロオロと解決策を尋ねれば、盛大にタメ息を吐き呆れたように口を開いた。 「ちゃんと誠実なところ見せるんだな。だいたいヤりたがってるの見え見えだから拒否られるんだよ。女の子はお姫様!分かったか!」 「は、はい!」 思わず背筋を伸ばし返事をした。 それに「よし。」と大きく頷くと橋本はまた飲み始めた。 てかさ、バージンとかお姫様とか。 まさか『男』とは言えないよなぁ。

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