1 / 44
1-1
それは、ある朝突然に起こった。
俺、立花世利《たちばなせり》はいつものように起きて布団から出た。
会社に行く前に図書館で借りてきた本を返そうと思っているので、今日は少し早起きだ。
そのままトイレに向かって、便座に腰掛けた。
ショロロ…と、おしっこが出ている感覚がいつもと違う気がして、自分の股間をのぞき込んだ──
「あああああああ???!!!」
俺は慌ててズボンを履き直して、寝間着のままアパートを飛び出した。
慌てて履いたサンダルが左右違うもので少し走りにくいが、お構いなしに足を動かした。
向かった先は一つ下の階。
『ピンポンピンポンピンポンピンポン』
──ガタガタ
「っんだよ?!うるせーな」
何度もインターホンを鳴らして出てきたのは、ボサボサ頭の起き抜けの幼馴染だ。
俺はあくびをする高藤優成《たかとうゆうせい》の胸ぐらを掴んで叫んだ。
「優成……大変なんだ!俺のちんこを見てくれ!」
「…………は?」
背の高い優成が般若のような顔で俺を睨みつけている。
「俺、昨日残業だったのよ。じゃ、おやすみ」
──バンッ!
優成がドアを閉じようとしたところを足で止めて、体を無理やり玄関にねじ込ませた。
「っな?!おい、世利。一体なんなんだよ」
「お願い。お願いだから……」
「うっ……、わかったから。とりあえず上がれよ」
俺が涙目で優成にすがりつくと、しぶしぶと言った様子で中に上げてくれた。
「んで?どうしたんだよ」
優成は俺をリビングのソファに座らせて、インスタントコーヒーを手渡してきた。
俺のだけにはいつものように牛乳が入っている。
優成はボサボサ頭で目を擦りながら、面倒くさそうに俺を見下ろした。
優成は背が高い。
俺も170cmはあるから小さくはないと思うけど、優成が隣にいると俺はいつもチビ扱いされている。
「優成、俺、トイレ、朝、起きてから……」
「落ち着け落ち着け」
優成が俺の隣に座り背中をさすってくれる。
──フゥ。
「さっきトイレでおしっこしたの」
「うん」
「そしたら、なんか感覚が変で、見てみたの」
「……うん」
「そしたら、ほら」
そう言って俺は優成の手首を掴み、自らの股間に当てた。
──ポフ
「お前のちんこ、小っさくなった?」
「違う!!あ、いや、そうなのかも!!」
「あ??」
俺の股間に手を当てながら、優成は眉間に深いシワを寄せた。
「だぁーかぁーらぁー」
俺は面倒くさくなって、その場に立ち上がり、勢い良くズボンを下げた。
「うわっ!お前っ、なんなの?」
「ほら!見て!」
上着を両手で持ち上げ、俺のちんこを優成に晒した。
……いや、昨日まで俺のちんこがあった場所を晒した。
「え、いやいやいやいや。お前……」
優成が口をパクパクして俺を見上げる。
「女だったっけ?」
「昨日は男だった」
「これ……まんこじゃん」
そう、俺のちんこは朝起きたら──まんこになっていた。
ともだちにシェアしよう!

