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それは、ある朝突然に起こった。 俺、立花世利《たちばなせり》はいつものように起きて布団から出た。 会社に行く前に図書館で借りてきた本を返そうと思っているので、今日は少し早起きだ。 そのままトイレに向かって、便座に腰掛けた。 ショロロ…と、おしっこが出ている感覚がいつもと違う気がして、自分の股間をのぞき込んだ── 「あああああああ???!!!」 俺は慌ててズボンを履き直して、寝間着のままアパートを飛び出した。 慌てて履いたサンダルが左右違うもので少し走りにくいが、お構いなしに足を動かした。 向かった先は一つ下の階。 『ピンポンピンポンピンポンピンポン』 ──ガタガタ 「っんだよ?!うるせーな」 何度もインターホンを鳴らして出てきたのは、ボサボサ頭の起き抜けの幼馴染だ。 俺はあくびをする高藤優成《たかとうゆうせい》の胸ぐらを掴んで叫んだ。 「優成……大変なんだ!俺のちんこを見てくれ!」 「…………は?」 背の高い優成が般若のような顔で俺を睨みつけている。 「俺、昨日残業だったのよ。じゃ、おやすみ」 ──バンッ! 優成がドアを閉じようとしたところを足で止めて、体を無理やり玄関にねじ込ませた。 「っな?!おい、世利。一体なんなんだよ」 「お願い。お願いだから……」 「うっ……、わかったから。とりあえず上がれよ」 俺が涙目で優成にすがりつくと、しぶしぶと言った様子で中に上げてくれた。 「んで?どうしたんだよ」 優成は俺をリビングのソファに座らせて、インスタントコーヒーを手渡してきた。 俺のだけにはいつものように牛乳が入っている。 優成はボサボサ頭で目を擦りながら、面倒くさそうに俺を見下ろした。 優成は背が高い。 俺も170cmはあるから小さくはないと思うけど、優成が隣にいると俺はいつもチビ扱いされている。 「優成、俺、トイレ、朝、起きてから……」 「落ち着け落ち着け」 優成が俺の隣に座り背中をさすってくれる。 ──フゥ。 「さっきトイレでおしっこしたの」 「うん」 「そしたら、なんか感覚が変で、見てみたの」 「……うん」 「そしたら、ほら」 そう言って俺は優成の手首を掴み、自らの股間に当てた。 ──ポフ 「お前のちんこ、小っさくなった?」 「違う!!あ、いや、そうなのかも!!」 「あ??」 俺の股間に手を当てながら、優成は眉間に深いシワを寄せた。 「だぁーかぁーらぁー」 俺は面倒くさくなって、その場に立ち上がり、勢い良くズボンを下げた。 「うわっ!お前っ、なんなの?」 「ほら!見て!」 上着を両手で持ち上げ、俺のちんこを優成に晒した。 ……いや、昨日まで俺のちんこがあった場所を晒した。 「え、いやいやいやいや。お前……」 優成が口をパクパクして俺を見上げる。 「女だったっけ?」 「昨日は男だった」 「これ……まんこじゃん」 そう、俺のちんこは朝起きたら──まんこになっていた。

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