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第21話
ふと気が付くと琥太郎のにおいがした。
いや、正確には“琥太郎のにおいしかしない”だ。
重い目蓋を開けると自分の新居とは違う、だけど見慣れた天井が映る。
そういや、コタの部屋に泊ったんだった
餃子にビールをおかわりし、更にレバニラまで注文をした。
それだけでは満足せず特製のチャーシューののったラーメンを食べて、それで途中で寄ったコンビニで更に酒を買って帰ってきて。
帰ってきてからも飲んでいた。
眠い頭でシャワーを浴びたのは覚えてる。
そうだ…汗くさいから寝る前にシャワーしろって言われたんだっけ
言わんとしていることは分かる。
汗やら外気やらが付いた身体にふとんを貸すのは少しばかり抵抗がある。
まぁ、シャワーを浴びたお陰で服まで貸してもらえたのだから文句はない。
最近は琥太郎のにおいに慣れたのか身体の反応も薄くなってきたし。
その家主は起きたのだろうか。
頭を枕から離すことなく視線だけでベッドを見れば、上半身を起こしているのが視界に入った。
だが、なにか違和感がある。
琥太郎…?
ただ腕時計を眺めているだけだ。
ただ、それだけ。
それだけなのに、なんで。
なんでこんなにも胸がざわつくんだ。
起きたアピールした方が良いのか…?
見られたく…ないんだよな…
分からない。
“なに”が見られたくないのか。
“なに”を感じているのが。
琥太郎のことも俺のことも分からない。
8年も離れていれば……。
これは、自業自得なのか…。
腕をわざとふとんに擦れるように動かし、目の上にのせる。
「ん…、あー……」
そして、わざとらしい伸びの声に空気がかわった。
あぁ…
これは触れちゃいけないやつだな…
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