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第22話
「鷹矢、おはよう」
「はよー。
早起きだな」
「もう9時過ぎてるけど?」
「休日の9時は早起きだろ」
身体を起こすと、琥太郎の手には腕時計はなかった。
……多分、あの時計を知っている。
琥太郎が大切な物を置く一角に置かれていたものだろう。
琥太郎の趣味とは異なる重厚な時計があった。
趣味…と言われたらそうかも知れない。
だけど、コタは…
自分の知らない1面を見て動揺してしまう。
いつまでも俺の知ってる琥太郎なはずない。
誰にだって知られていない1面くらいあって当然なのに。
逃げたのは俺なのに。
なのに、こんなことを思うなんて何様だ。
「冷凍のあさりあるから、味噌汁くらいなら出来るけど飲む?」
「はぁぁ…最高かよ」
俺だって、こうして隠した1面がある。
なのに、“親友”のは知りたいなんて、とんだ傲慢だ。
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