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第23話

ベッドから降りる足の白さに何故か目がいく。 この気持ちとは上手く付き合えていると思っていたのに。 だから、帰ってきたのに。 ……あの腕時計のせいか。 「先にトイレ使うよ」 「あぁ…」 「どうした? 先に使いたい?」 仕事のスイッチでも入れた方が自然に喋れる。 「いや、大丈夫。 ゆっくり使えよ」 「俺の部屋のトイレだわ」 わざとヒラヒラと手を振ってみせると、眉を下げて笑った。 琥太郎の笑い方だ。 俺の好きな笑い方。 消えていく背中に、俺の笑顔も自然と消えた。 ……全然、気持ちと付き合えてねぇな… だっせぇ… 想像していた30歳はもっと大人だった。 なのに、俺はどうだ。 このザマだ。 親友への気持ちとの向き合い方すら分からずにいる。 “親友”の顔をして。 なんだっけ そんな絵本あったよな 捕食者と被食者が仲良くなる話… 琥太郎と保育園で読んだ気がする。 前髪をくしゃっと握ると、今度は意味もなくワシャワシャと掻き乱す。 あの頃に戻れるはずなんてない。 琥太郎で射精をしてしまった時点で、俺の気持ちは最低な方へと進んでしまっている。 大切な“親友”を汚してしまったんだ。 ……そう、強く自覚しなければ。

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