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第24話
「朝からしあわせだなぁ」
「もっと崇めてくれて良いけど?」
味噌汁だけかと思ったら、冷凍していた白米に、これまた冷凍していた焼き鮭と大葉、胡麻に塩昆布を混ぜ混んでおにぎりを作ってくれた。
琥太郎の家のおにぎりは具材が混ぜ込んまれていて美味いんだ。
そんな家で育った琥太郎も当たり前に混ぜご飯のおにぎりを作る。
実家の具材が包まれたベーシックなおにぎりとは違い、どこを食べても具材が口に入る。
それがたまらなく好きだ。
なんか贅沢な気持ちになるおにぎりを2人で握る。
「おばちゃんの混ぜご飯に美味かったよなぁ。
鯖のやつとか」
「鷹矢の家のも美味しかったよなぁ。
ばあちゃんの梅干しが酸っぱくて。
あ、あのでっかいやつ覚えてる?
中学の時のさ。
おにぎりの中からからあげとウインナーとたまご焼き出てきたやつ」
「あった、あった!
弁当箱いらねぇしって母さん詰め込むんだよな」
「あれに齧り付くの今でも憧れる」
案外どちらも無い物ねだりなのかもな。
人が持っているから羨ましく思う。
人間は卑しい。
隣の芝生が青く見えたり、人の花は赤く見えたり、羨ましさから妬んだり。
人が食べてる食事が美味そうに見える経験は、ほぼすべての人が経験したことがあるだろう。
それに飲まれることだけはしたくない。
飲まれてしまえば、本当に隣にいることは出来なくなるから。
グッと飲み込み、笑顔を向ける。
これが、今出来る最善だ。
「早く食おうぜ」
「さっきまで爆睡かましてたのは鷹矢だろ」
「…起こしてくれよ…」
疲れてる友達叩き起こせるほど鬼じゃねぇよ。
そう笑う琥太郎の顔は、……やっぱり好きだ。
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