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第38話
無事に講習も終わり、琥太郎と反省会含めたお疲れ様会をしようという話になった。
ま、いつもとかわらず一緒に晩飯を食べて、そのまま家で飲むパターンだ。
琥太郎からも意見を聞きたいのは事実だが、聞かずに明日になるのは目に見えている。
これについては、開き直っている。
だって、琥太郎と飲むと楽しいから仕方がない。
明日の自分が苦労しても、その時間は大切にしたいと思うんだから。
受講した農家さんも吉野くんも、講師から「これなら大丈夫」と太鼓判を押され、ほぼ全員が笑顔で修了証を受け取っていた。
もう少し練習や勉強が必要だと判断された人は、次に繋げられるように引き続きサポートしつつ、どのくらいの頻度で受講をするか農協と話し合いをしなければ。
どのくらいのペースで講習をするか、気持ちを落とさずにいられるか。
手隙…といっても、作物によってマチマチだ。
そういうところも大切にしなければならないことだ。
暫くは稲作中心のペースにするか等の課題も頭に入れつつ、今日の晩飯についても考える。
「なに食うかなぁ。
コタは、なにが食いたい?」
琥太郎の歩みが、1枚のポスターの前で止まった。
隣に並び見てみれば、海上花火のもののようだ。
「海……」
「コタ…?」
ポツリ、と地面に溶けていくような声に、思わず隣を見た。
そして、目を見張った。
俺の知らない“誰か”がいる。
深い、深い、深海の色を見た。
思わず腕をひっ掴んでしまう。
「鷹矢…?」
「……コンビニ行こ」
「え、コンビニ?
飯は?」
「先に飲み物買う。
コタのも買うから、行こう」
なんで、こんなに胸が騒ぐんだ。
なんで……、こんなに、引き留めたくなるんだよ……
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