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第41話
ふと視線を下げると街灯に虫が群がっている。
なんで灯りに集まるんだろう。
唐突にそんなことを思った。
東京でも、人が灯りに集まっていた。
それは、街であったり、場所であったり。
灯りの少ないここでは、人々は家へと帰る。
当たり前のことが、こんなにも違う。
違う町で生きている。
缶を持っているのとは反対の手で顔を覆い、深く息を吐き出す。
こんな時間におっさんがビールを飲みながらブランコに乗っているなんて、端からみたら恐怖映像だ。
通報されるかも知れない。
この気温では買った惣菜が痛んでしまう。
解ってる。
……解っているけど、動けないんだ。
だって、あんまりだろ…。
あんな現実、あんまりだ……。
一昨年…
居なくなってから、ずっと待ってたんだろうな…
どんな気持ちで…
どんな思いで……
琥太郎にとって大切な人。
その人の存在が、きっと琥太郎を生かしていた。
だけど、その人の死を知ってしまった今、琥太郎はどうなるのだろうか。
生にしがみつかなくなる。
ふとした切っ掛けで、“そちら”を選んでしまうんじゃないか。
それも、簡単に。
その可能性はとても大きい。
穏やかそうな琥太郎だが、案外大胆な選択をする。
小さい頃から、ここぞって時には度胸のある奴だった。
もし…、最悪の選択を選ぶなら……。
止めるのか。
止められるのか。
そんな権利のない、俺に。
想像することすら出来ない現実を突き付けられたんだ。
なにをしてやれるとか、そんなことは分からない。
それでも、俺は琥太郎の傍にいたい。
俺が、隣にいたい。
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