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第40話

小さい頃から観ていたアニメで思った。 生きてる人間は死んだ人間には絶対に勝てないって。 だって、そもそも勝負が出来ないんだ。 だから、勝てない。 それは、“どっち”が狡いのだろうか。 目的もなく、なんとなくで歩いて辿り着いたのは全然知らない公園だった。 こんなところに公園があったなんて知らなかった。 古びた遊具の中からなんとなくブランコに座ることを選んだ。 座るならベンチだってことくらい分かっている。 けど、ブランコが目に入ったから。 ただ、それだけの理由で遊具を選んだ。 手に持ったエコバッグを漁り、銀色の缶を取り出した。 まだ冷たいビールのプルタブを開ける。 こんな時だっていうのに、爽快な音をさせるのがやるせない。 今日は半月か… こんなところで酒なんて飲んでいたら蚊の都合の良い飯になるだけだ。 後から後悔するって分かっている。 だけど、なんとなく帰りたくなかった。 だからと言って、琥太郎の部屋に行く気もない。 どこでも良かった。 適当な飲み屋でも、どこでも。 またまた歩いていたら公園を見付けただけだ。 ただ、それだけ。 半分なくなったんじゃなくて見えないだけ、か… 太陽が…当たらなきゃ見えない… チビチビとビールを飲みながら、空を見上げる。 真っ暗な空は都会では見えなかった。 見ることすらしなかった星をなんとなく眺めながら、天を仰ぐ。 人は亡くなったら星になるのだろうか。 だったら、行儀悪く盗み聞きをした俺のことも見ているのだろうか。 地球の裏側に逃げたって、そこでも星は見えるなら、逃げられやしないんだ。 会ったこともない“誰か”。 だけど、知っている“誰か”。 夜にしか会えないなんてそんなことはないのに、どうして星に例えられるのだろう。 空にいるなら、墓はなんなんだ。 星が綺麗だからか。 それとも、生きている人間にとって都合が良いのか。 俺達は、いつも自分勝手だ。

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