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第75話
擦れ違う子供達の笑顔に、会場へと向かう足どりも期待に軽くなる。
今日は農協主催の収穫祭だ。
稲刈りという一仕事終え、お祭りで気分をパッとかえたくなるのはあるあるだ。
焼きそばやフランクフルト、かき氷に豚汁の模擬店、農作物の直売、子供向けの輪投げやヨーヨー掬い、くじ引き。
今回は農業用ドローンの実演を任されて仕事として訪れたが、やはりお祭りの空気感にワクワクしてしまう。
すぐに目当ての背中を見付、駆け寄った。
黒に混じる白髪が太陽光でキラキラ光っているので見付けやすい。
それに、沢山の話をしてきた人だ。
後ろ姿だって分かる。
「佐々木さん、おはようございます」
「遠山さん。
おはようございます」
「本日は貴重な機会をいただき、ありがとうございます」
「いやいや、こちらこそ休みの日にすみません。
けど、今日は子供を連れてきている親御さんも多くて、より沢山の若い農家さんにドローンのことを知ってもらう機会に丁度良いと思ってね。
子供達も、ドローンみたいなの好きでしょ。
こっちじゃ、中々見掛けないからきっと喜びますよ」
子供達には、選択肢を沢山持っていてほしい。
農業を選ぶのも、自分のように陰から支えるのも、憧れに飛び込むのも、沢山考えて沢山悩んで、その上で自分の選択で決めることに意味がある。
ただ、どうしても小さな町では本当の自由を出来ないこともある。
生まれ順や、性別が足を引っ張る時だってある。
時には、家庭の事情。
自分ではどうしようもないそれらは、田舎ではすごく大きな闇となる。
そんな子達の足を引っ張るモノを、ドローンで離してやりたい。
夢は夢で終わらせた方が美しいかもしれない。
けれど、すれ違う笑顔はやっぱり夢を追っているからこそキラキラ輝いているんだ。
見上げた先の空はどこだって広く青いんだから。
「時間まではゆっくりしてください。
食べたり、飲んだり、遊んだり」
「はい。
ありがとうございます」
片手を上げ、人波に消えていく頭を見送りながらまずは勤務中の幼馴染みを探すことを考えた。
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