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第81話
「ママ、あーん」
「あーん。
美味しいっ」
「へっへへぇ」
和やかな空気の中、腹ごなしをしていると、アラーム設定していたスマホが震えた。
それをスワイプして停止させ、胸ポケットからネームホルダーを取り出す。
そろそろ、社会人の顔をしなければ。
「っし、そろそろだな。
準備してくるか」
「頑張れ」
差し出されるグーに同じものをゴチッとぶつけた。
碧も真似をするのに、コンッとぶつけた。
すぐに吉野くんと合流し、準備を進める。
俺に出来ることは、小さいことだ。
誰かと便利を繋げる仕事。
だけど、きっと大きなことだ。
願いのようなその気持ちをドローンと共に秋晴れの空へと飛び立たせる。
操縦は任せろ、とドローンを1つ撫でた。
格好良いところを魅せてやろう。
「ドローンを使っての農業というと、デジタル管理が難しいんじゃないかというお声をいただくことが多くありますが、そういう時の為に私共がおります。
電話でのサポートや、直接駆け付けて、分からないところを解決させていただきます」
実際に契約してくださった方からの意見や、写真なんかを混ぜながら吉野くんが作ってくれた資料を見てもらう。
けど、結局は百聞は一見に如かず。
見せる方が早い。
「では、実際に飛ばしてみましょうか」
目測者は、吉野くん。
目視でも確認出来るが、ここで子供達や若い農家さんに嫌な印象を与えたくはない。
ドローンは危険な物ではなく、正しく使えば便利な物だ。
手間や時間を節約出来たり、命を守る手伝いだってしてくれる。
出来た時間を家族と使う、守られた命で明日も誰かと笑い合う。
便利や、機械を使うことは悪ではない。
「すげぇーっ」
「このドローンであれば、薬剤散布も1ヘクタール30分程で終わらせることが出来ます。
このように小回りも効きます」
ゆっくりとステージの上を右へ左へと動かしていくと、子供達から歓喜の声が上がる。
やっぱりこういうのは好きだよな、俺も好きだ、と心の中のキッズな自分が喜ぶ。
こんなに重い機体が飛び上がり自由に空を駆ける。
ただ、それだけのことにみんな目が離せなくなる。
この世界は制限も多い。
だけど、本当はもっと自由なんだ。
みんなが青空を飛ぶドローンを見上げている。
俺も、吉野くんも、碧も、琥太郎も。
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