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第80話

漸く買えたフランクフルトを2本持って空いた席に腰を下ろすと琥太郎と共に碧がやって来た。 「鷹矢。 預かってきた」 「ママ、おしっこだって」 「あー、言っちゃった…」 「女性は、おしっこじゃなくてお手洗いって言うんだよ」 「てて、あらうの?」 「花摘じゃねぇの?」 「おはな?」 混乱してきた碧を膝に上げ、叔父の顔をした琥太郎は買ってきた物を机に広げた。 焼きそば2パックと、貰ったというたこ焼き1パック。 豚汁は列を成しているので今は難しいのが惜しまれる。 「おいしそ」 「食べるか?」 「うんっ、 たべるっ。 いただきます」 小さい口がパクッと麺を咥えると、ちゅるっと吸い上げた。 口の端っこがソースで汚れるが、それがまた美味そうに見える。 いつか、こうして琥太郎が家庭を持つまで…いや、持ってからも陰ながら支えたい。 喩え“親友”という立場だとしても。 「碧、フランクフルトも食べな」 「ありがと!」 3人で食べていると、琥太郎のスマホが震えた。 「もしもし、姉さん? え? あー、奥の机の所にいる。 …うん、立つの?」 どうやら通話相手は瑠璃子さんらしい。 話の内容的に、場所が分からないから立ってほしいということか。 だが、膝の上には碧が唇をテカテカにさせながらフランクフルトを食べている。 「碧借りて良い?」 頷く頭を確認し、フランクフルトを手から離す。 ベタベタの手でも良いか、と、軽い身体を持ち上げた。 「碧、しっかり掴まってくれ」 「わーっ!」 肩車してやると、可愛い声が上から降ってくる。 琥太郎もニコッと笑う。 小さい頃と変わらない顔。 それが自分を見上げている。 「姉さん、碧見付けられる? 鷹矢が肩車してくれてる。 碧、ママ見える?」 「いた! ママー!」

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