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第29話 みんなで夕陽を眺めて

「あ、そうだ、マリローズにあの場所を案内したい」  マリローズがアナマリーなら、きっと懐かしんでくれる。 「でもちょっと今日の予定変更を託けないと」  アルノーの言葉に、マリローズが答えた。 「昨夜あのままお戻りにならなかったので、きっと上手くいったんだと思って、お兄様の予定は一週間お休みにしてあります」  さすが、アナマリーだったマリローズ。 「どうせわかる事だから、待望のアンリ様が見つかった話もしてありますから」 「お……おぉ……」  『皇帝の庭』へマリローズとシモンを案内する途中、すれ違う侍従や皇宮職員達が、暖かい目で見ているのを感じる。涙ぐむ者や小さく拍手する者もいた。アンリ様はどの方かな?って思う者はいない。何故なら、ルネがずっとアルノーの腰に手を回していたから。更にはその手に、アルノーは自分の手を重ねていた。 「そっくり……」  皇宮の奥庭、アナマリーの家に似せた小屋と白い花の庭にマリローズは喜んだ。アルノーは几帳面なので、さっき小屋を出る時にきちんと片付けてあったので、そのまま小屋の中も披露した。 「この窓飾り! 懐かしいわ。よくこんなに細かく覚えてましたね」 「全部の記憶があるから、ここを作らないと寂しくてたまらなかったんだ。ここで記憶の中のアンリとアナマリーと話をしてた」  ルネがアルノーに口付けて、ぎゅっと抱いた。  庭で四人、ベンチに座ってエルダーフラワーのジュースを飲んだ。 「この花、ここにあったなんて」  というアナマリーの言葉に、 「高原植物を品種改良して植えてあるそうですよ」  って言ったのは、ルネ。  アルノーはそんなやり取りを嬉しく思いながら、皆で夕陽を眺めた。

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