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第31話 侍女オデリー
アルノーの侍女のうちの一人、オデリーは自他共に認めるアルノー強火担。だが、アルノーの前ではお首にも出さない。なぜなら、恋愛とかでは全くないからだ。ただただ愛でる対象なのだ。アルノーとルネの絡みについては、寝室の照明や水差しに生まれ変わりたいと思っている。着替えや髪のセットを主に担当し、他の侍女には『お耽美担当』と呼ばれている。後毛がほつれるタイミング、髪の結び目の解けるタイミングすら自由自在。ルネには強火担がバレているが、有能なので、ルネから特別手当が出ている。
オデリーは皇都の商家出身だった。比較的のんびりとした貴族家出身の侍女たちよりも目端が効き、物覚えが良く、自分が動く事を厭わない。あれよあれよと気が付けば皇帝付きとなったのだった。
ただ一つ、貴族家出身の侍女に比べて、ガサツなところは否めない。そんなところは逆に厳しいルールの中で過ごしてきた貴族家出身の侍女や侍従に面白がられている。皇帝アルノーすら怒られたりする。
アルノーとルネの初めての時に活躍した煉香油は、オデリーの手作りだった。オーガニックで固まりやすく、溶けやすい。香りは何種類かあって、中に入っている草花に至っては採取時期によっても配分を変えるほどの凝り様だった。元々、アルノーの髪に塗り込むために作られた。成分的に顔や体、全身に使えるので万能と言える。
そこそこの手間がかかる為、ルネの出資で小さな工房を作り、商品化することになった。一般にも売り出した。
「皇帝付き侍女オデリーAudélie, suivante de l’empereur」という店で皇室御用達を掲げている。ルネの許可で。
・La Leçon d’Amour〜愛を教えて
・Retrouvailles〜再会
・À la recherche de ma belle〜愛しい君に逢いたい
・Le Temps Long Offert à Toi〜君に捧げる永い時
・La Joie de T’avoir Retrouvé〜巡り逢えた喜び
・L’Empereur Désire〜皇帝は希う
という名前の煉香油を売っているが、
・À la recherche de ma belle〜愛しい君に逢いたい
・L’Empereur Désire〜皇帝は希う
は一般には売っていない。この二点だけは献上のみ。
ルネは献上品以外も気に入って自分で手に入れて使っている。その日の気分で使い分け。
オデリーが変なオタクで良かった。と思うルネだった。
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