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幸福(こうふく)

※性描写がありますので、苦手な方はご注意下さい。 ────── リビングの灯りが二人の影を壁に映す。匠の身体は既に熱を帯び、震える声が喉の奥で詰まる。 「……はるかっ、んん……っ!」 「お前は俺だけのものだ……」 匠の顎をそっと持ち上げ舌先で唇をなぞった後、すぐに強引に口内を侵す。濃密な水音が室内に響く。 「んっ……ぁ、は……っ!」 呼吸を奪われ、匠の指先は無意識に遙のシャツをキュッと掴む。それを見た遙は細い腰を引き寄せ、更に深く舌を絡める。 「……今日は加減が出来んかもしれん……」 唇が離れるたびに名残惜しそうに糸が引く。潤んだ琥珀の目で見上げてくる恋人に、青灰の瞳は細まる。 「お前が可愛過ぎるのが悪い……」 低く艶のある声。匠の首筋に口付けを落とし、吸い上げる。 「や、やぁ……っ、ダメ……」 甘い悲鳴が耳に届くも止まる気配は無い。白い肌には次々と赤い痕が刻まれ、遙は何度も場所を変えては執拗に刻印を残していく。 「お前の身体中に、俺の証を付けたい……」 匠の呼吸は乱れ切っており、脚には力が入らない様子。 「……おい、立て」 優しく命じると、震える脚で何とか踏ん張ってみせる。 「も……これ以上は無理だって……!」 「……無理でも何でも良い」 太腿にそっと手を添え、そのまま強引に抱き上げる。 「……あっ!」 身体が宙に浮き、思わず戸惑いと怯えが混ざったような声を上げた。 「……お前は、ただ身を委ねていろ」 壁に押し付け左手で腰を支えながら、もう片方の手で敏感な秘部を露出させ、愛撫する。 「あっ! や、やだぁ……っ!」 「……本当にそうか? こんなに濡れているのにか?」 指がナカで執拗に動き、匠の声は徐々に高く、大きくなる。 「あ、やぁ……っ、も……っ、もう……!」 「……良いぞ。俺の指でアクメしろ……」 震える脚、額から落ちる汗、濡れた琥珀の目。 「っ……はるかっ、もう、やだ……イく……っ!」 「……良いと言っている。派手に射精しろ」 低音の囁きに匠は泣きながら首を縦に振り、全身を痙攣させて絶頂した。 「あ……っ」 余韻に浸る匠を満足そうに見つめつつ、遙は自身を押し当てる。そして間髪入れず、震える声を遮るように深く貫いた。 「あ……ぁあぁっ!」 その瞬間、匠の全身が大きく跳ね、快楽に染まった嬌声が夜に溶ける。 「お前は俺のものだ……」 奥底で囁かれる言葉に、匠の意識は更に白く霞んでいく。 「お前だけだ。お前しか……要らない」 深いピストンにより、汗と涙が混じる。突き上げるたびに絶頂を繰り返し、意識遠のく匠を獣のように貪る。 「死んでも離さん……」 呻くような声でそう囁くと、また強く腰を打ちつけた。 「はっ、はるかぁ……らめ……またっ、でるぅ!」 呂律が回らず言葉は崩れ、零れるのは甘い泣き声と悦楽の悲鳴だけ。 遙の狂おしい程の愛は、もう止まらない。 (……可愛い) 乱れた茶色の髪、紅く染まった頬、涙で濡れる睫毛。目の前で何度も快感で震え、可愛く喘ぐ恋人。 (……何故、こんなにも愛おしいんだ……) 息を大きく吐き、手のひらで匠の尻肉を強く掴む。その指先に食い込む柔らかさが、更に己の理性を溶かしていく。 (……もう、限界だ……) 何度も何度も最奥を突くたびに匠の嬌声が上がる。 「あっ! あぁっ……! はるかぁっ!」 甘く掠れた声が鼓膜を溶かす。同時に、腹の奥が灼けるように疼く。 (……もっとだ。もっと見たい。もっと聞きたい。お前の可愛くて情けない姿を……もっと……) 「……理解しろ。俺が、どれだけお前に欲情しているかをな……」 低音の声で囁くと匠の顎を掴み、無理やり顔を上げさせた。 「……っ、は……っ!」 涙で濡れた琥珀色の目が、自分だけを映している。それを見た刹那、心臓が火傷するほど熱くなった。 (この目も、声も、体温も、何もかも全て……俺だけのものだ……) 「……愛している。何度言っても足りない。言わずにはいられない……」 唇を重ね、舌を深く押し込む。切なさ、愛しさを全部、ぶつけるように。 「……あ゙ん゙っ……あ゙っ゙……ん゙あ゙ぁ゙ッ!」 喘ぎ声に濁りが混ざり出した。もう何もかもが愛しくて堪らない。何度も絶頂し、白目を剥いて痙攣している匠を強く抱き締め、額を重ね、吐息を感じ合う。 (俺は狂っている。どうしようも無く。だが、それで良い) 「……未来永劫、俺はお前と共に生きる」 蕩けた匠を見つめながら小さく言葉を零した。胸の奥は灼熱の愛で焼き付いている。 「愛している。俺の……俺だけの匠……」 陰茎を深く秘部に沈み込ませると内側から射精を促すようにキュウキュウと締め上げられた。その強烈な快感に遙は眩暈を覚え、腰の動きは苛烈を極める。 我を忘れるほどの、快楽に溺れるような激しいセックス。 遙の世界の全てが、匠で満ちていた。 (やだ……もう、無理だ……っ!) 身体が痺れ、何処が気持ち良いのか、もう分からない。ただ遙の熱が奥深く押し寄せてくる。 「あ゙っ! あ、あぁっ! あ゙ぁ゙ぁ゙ッ!!」 涙が溢れて止まらず、声は勝手に漏れてしまう。 (気持ちいい……きもちいい……っ) つい、恥ずかしくて顔を逸らそうとしても、すぐに顎を掴まれ無理やり目を合わせられる。 「や゙っ……や……やだぁっ!」 声帯からは甘くて震えた音しか出ず、説得力がまるで無い。 (やだって言ってるけど……でも、本当は……) 胸の中で、苦しくて溶けそうな感情が渦巻く。 (嬉しい。嬉しいんだ……) 熱を帯びた青灰の瞳から放たれる視線は何処までも深く、狂おしいほど真っ直ぐで。自分だけを見ているのが嬉しくてたまらない。 「あ゙っ、や、や゙ぁ゙……っ!」 何度、奥を突かれたか分からない。視界が白く霞む。 (……こ、こんなに激しいのは初めてかもしれねぇ……。でも、それでも……嫌じゃない。もっと……欲しい……っ!) 息は乱れ、喘ぎ声が絶え間無く漏れる。 「やっ、あ、あ゙ぁ゙……っ、は、はるかぁっ……!」 声が震え、遙の名を呼ぶたびに律動は早くなり、強い快感が更に襲ってくる。 (好きだ。俺も……お前以外……いらねぇ……っ!!) 「……あ……もう、だめ……イく……またイ゙ぐッ!」 泣きながら訴えると、遙が小さく笑った。 (その顔、ずりぃよ……) 「や゙……やだっ、でちゃうよ゙ぉ……っ!」 汗と涙で顔はぐしゃぐしゃ。けれど、その顔を見て嬉しそうに目を細める遙が、とても愛おしい。 (また……全部、持っていかれる……っ) 心と身体、何もかも全部、遙に溶かされていく。 「っ、はるかっ! おれ……も゙うダメぇ……ッ!!」 思考が途切れ意識がぼやけていく。遙の熱、遙の声、遙の匂いに包まれながら射精をした。そのすぐ後に下腹部から白濁の熱を感じ、とても嬉しい気持ちでいっぱいになった。もはや頭の中には遙しか居ない、甘くて苦しくて、幸せな狂気の海に溺れてしまったようだ。 (……遙……好きだ……) 遙に注がれた精液が溢れ、尻を伝って流れる中、声に出来ない想いが胸の奥でも溢れた。部屋の中で乱れた空気が甘く滲む。 寝室に移動し、ベッドに横たわらせられた匠の白い肌には何度も刻まれた赤い痕が目立ち、汗で濡れ光り、そしてピクピクと震えていた。遙の指が喉元を滑ると微かに声を漏らす。 「……っ、あ……んあぁ……っ」 直腸内を昂った熱で擦り上げるたび匠の背は反り、細い指がシーツを強く掴む。その全てを見逃さず、舌先で涙の筋をなぞるように舐める遙。 「……可愛いな……」 低く、熱の籠った声。匠の口元は唾液に塗れ、声にならない言葉を紡いでは途切れる。それでも、その表情は快楽に溶かされた陶酔の色が浮かんでいた。一方の遙の瞳は鋭く青色に光り、その奥では底無しの独占欲と愛が渦巻いている。 「それだけではない。お前は美しく、とても官能的だ……」 吐息を交えながら囁く。匠は首を小さく横に振るが、その仕草さえも甘く、遙にとってはただの興奮材料にしかならなかった。 「っ、や……もう、むり……っ」 震える声に応えるように遙の熱が更に奥深くへと入っていき、ただひたすらに貫く。 「……嘘を吐くな」 上から降ってくる低声に匠はまた震え、喉からは甲高い声。 「ほら、もっと善がり狂え……」 大きな手が腰を押さえ、逃げる隙も与えずに最奥を突き、S字結腸を責める。 「あっ! あ゙、ぁぁ……っ!」 夜気の中、二人の声と吐息が絡み合い、全てが溶け合う。繰り返される激しい律動に匠の意識は何度も霞んでは戻り、壊れそうな悦楽の波に飲まれていった。遙は、そんな匠をずっと見下ろしている。 (絶頂で蕩けた表情も、涙も、指先の震えも……全てが、ただ……愛おしい) 「お前も……俺だけ、だろう?」 低く問うと、匠は震えた唇で必死に答える。 「っ、はるか……だけ……っ!」 その返答に青灰の瞳は細められ、穏やかな微笑が浮かぶ。 「……そうだ。お前には俺だけだ……」 再び深く沈み込む熱。匠の甘い嬌声が上がり、やがて白濁の液が二人分、迸る。 夜が明ける気配のない、濃密な空気が漂う室内。シーツはしっとりと濡れ、匠の身体は震えながらも遙の腕の中にすっぽり収まっていた。 「はっ……ふ……ぁっ」 乱れた呼吸の音だけが静かに響く。胸を上下させる匠の頬には、まだうっすら涙の跡。遙はそれを舌でそっと舐め取った後、ゆっくりと茶色の髪を梳く。 「……落ち着いたか?」 低く甘美な音が耳奥を痺れさせる。匠は微かに頷き、潤んだ目で視線を上げた。 「な、なぁ……遙?」 「……どうした」 「今日……さくが来たけど……」 一瞬、遙の手が止まった。しかしすぐに、いつものように柔らかく動き出す。 「お前、何話したんだよ……」 口に出してすぐ、痛みと恐れが入り混じった後悔に襲われた。遙はフッと笑い、匠の頬を大きな手で優しく包む。 「何を話したか……か」 怯えるように琥珀の目を揺らす。 「朔は……最後まで俺に縋ってきた。だが、俺は応えなかった。無論、応えるつもりも無かったが」 遙の声は淡々としていた。匠の呼吸がまた乱れ、小さく嗚咽を漏らす。 「……俺は、あいつとの過去も、あいつの気持ちも……もう今となっては心底どうでも良い」 親指がそっと匠の唇を撫でる。 「俺に必要なのはお前だけだ。それ以外は何も望まん……」 「は……遙……」 喉が震え、思わず熱い涙が零れ落ちる。 「……ばか……っ」 小さな声が、安堵に満ちていた。 「……あぁ。お前にだけは馬鹿だと思われても良い」 微笑み、そのまま匠の額にキスを落とす。 「余計な事は考えるな。今日も、だいぶ無理をさせてしまった。もう寝ろ……」 匠は涙を拭い、小さく笑った。そして震える腕を伸ばし、遙の首に絡める。 「分かったよ……バーカ……」 夜が深まる中、静かに二人の呼吸が穏やかに重なる。 朝。弱い陽光がレースカーテンを透かし、静かにベッドの上を照らす。匠はシーツをギュッと掴み、隣でコーヒーを啜る遙の横顔を見つめながら、溜め息。 「……何だ。何か言いたい事がありそうだな」 コーヒーカップを置き、少し首を傾げる。その何気無い仕草が、匠の心を掻き乱す。 「っ……!」 唇を噛んで目を逸らす。けれど、決意したようにまた遙を見つめ返した。 「……遙」 「……どうした」 「やっぱり俺、昨日の事……全部知りたい」 青灰色の瞳が細くなるのを見て匠は息を呑んだ。それでも声を震わせながら続ける。 「頼むから教えろよ……っ」 途端に静寂が落ちた。匠の手が、忙しなくシーツを弄る音だけが響く。揺れ続ける琥珀の目。 「……どうしても全部、聞きたいのか」 「あ……当たり前だろ! お前が言ったんだぜ? 隠すな、嘘をつくな、って……」 その声は怒りとも、寂しさとも取れる強い響きを持っていた。遙は長く息を吐き、観念したように小さく笑う。 「お前は……本当に……」 匠を抱き寄せ、そっと顎を持ち上げた。 「……朔は、俺に抱いてくれと懇願してきた」 琥珀色の目が見開かれる。声を失い、ただ遙を見つめる事しか出来ない。 「俺は拒否した。だが……朔は諦めなかった。肌を晒してまで、何度も頼んできた」 遙の声は静かだが、その奥では冷たい怒りが含まれていた。 「それでも、俺の心は全く動かなかった。俺はお前を選んだ。ただ、それだけだ……」 目から涙が溢れ、頬を伝い、肩を震わせる匠。忙しなく動いていた手は止まり、毛布をギュッと握る。 「……バカ……っ」 言葉は弱々しい。けれどその中には確かな安堵と愛が滲んでいた。遙はそんな匠を更に強く抱き締め、色素の薄い髪を撫でる。 「……これで全部だ。もう良いか?」 「っ、うん……っ!」 力強く頷いてから涙声で返事をした。遙の抱擁は何処までも優しく、とても温かい。 「でもさ……もっ、もし、お前が……さくと、してても……」 不意にポツリと呟かれた声は細く、喉の奥で震えていた。青灰の瞳から放たれる視線は鋭いが、その言葉を途中で止めるような事はせず、静観する遙。 「お、俺は……っ」 「……俺は……?」 低い声が耳元に落ちた。その瞬間、匠の唇が僅かに開き喉を詰まらせる。それでも強く息を吸い、言葉を続けた。 「俺は……もうお前を嫌いになれねぇ。変態だし、ドSだし、気持ち悪ぃし、元々は嫌いだったけど……でもっ! やっぱり好き、なんだよ。マジで……」 吐き出すように紡がれた言葉に遙は目を伏せ、肩を僅かに震わせた。一拍の沈黙が流れる。 「匠……」 すぐに、ゆっくりと匠の頬に手を伸ばす。優しい手付きだが、深い執着と溺愛が滲んだ眼差し。 「ふふ……。本当に、お前という奴は……狡いな。どれだけ惚れさせたら気が済むんだ?」 震えた低声。匠の額に唇を押し付け、何度も小さくキスをする。 「お前が、そう言ってくれて……とても嬉しい。もう俺はお前を永遠に離さない。……それでも良いな?」 喜びのあまり指先を震わせながら、匠を強く抱き締めた。 「俺だって……離れねぇ。ぜってぇ……っ!」 泣き笑う匠の声も揺れる。 「だから……離すなよ。いらねぇって言われても、もう無理だかんな……!」 「……あぁ。誰にも渡さん。お前は永久に俺だけの可愛い恋人だ……」 そう言い切ると再び匠の唇を深く塞いだ。それは誓いのように重く、支配と愛が混ざり合った口付け。 嫌いだった奴が 気づけば誰よりも愛しい人になっていた だからもう、揺らがない これから先も、ずっと……

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