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数か月後、俺はマッチングアプリで知り合った男性と会うことになる。
友達にはその後あのような合コンには一切参加しないことを告げた。それならばどこで出会うか…悩んだ結果、俺はゲイ専用のマッチングアプリを使うことにする。
マッチングアプリは恐れていたほど怖くはなく、自分の第一次性と第二次性、タチかネコかを入力すれば簡単に使うことができた。
アルファとの出会いなんて求めていない。ただ、少し幸せになりたいだけ。
そんな気持ちでいたら、相手からアプローチが来た。名前はYuu、なんとアルファだった。本名は金城優で、自分も最近になってアプリを使い始めたのだと教えてくれた。名前の通り優しい彼は俺がベータ性で男性と付き合うのが難しいと感じていることを、俺の心を解きながら聞いてくれた。
そうして初めて会う日がとんとん拍子に決まった。
場所は近くに繁華街のある駅の近くで、時間は夜だった。優はかなり忙しく働いているらしく、夜しか時間の都合が空かないのだとか。確かに返信も夜遅いことが多く、俺はそれに普通に納得してしまった。
そうして会う日。真冬になりつつある午後七時ごろ、寒さに耐えるように手を擦りながら駅に着けば優と思(おぼ)しき背格好の男性がベンチに座っていた。声をかければ、優だと言う。
「は、初めまして!」
「うん、初めまして悠太くん」
いつもチャットで話していたせいか初めてという気はしない。そう言うと、優は確かにと笑いながら答えた。
「さて、ご飯食べに行こう」
「はい」
「敬語じゃなくていいからね」
「あ、ありがとう」
優はいつも通り本当に優しく、初手から手を繋ぐなんて愚行を犯すことすらなかった。段階を踏んでいきたいんだ、と自分が話していたことを思い出す。それをちゃんと守ってくれるらしいことが嬉しかった。
夜ごはんは少しいいとこのディナーを食べた。半分払うと言ったのに、優はいつのまにか支払いを終えてしまっていて俺は手持ち無沙汰になってしまう。なんてスマートなんだ、と俺はつい感動してしまった。
帰る時も彼は優しくて、軽く俺の頭をぽんぽんと撫でて帰って行った。これが大人の余裕ってものなのだろうか…。優は俺より十歳も年上なのだ。
それから数回、彼と逢瀬を重ねた。そのたびに俺は優に惹かれていって、徐々に好きになっていった。大人な彼はいつも俺より一枚上手で、からかわれることもあったがその行為すら楽しむことが出来た。初めてのマッチングアプリでこんなにうまくいっていいのだろうか。そう思っていた頃だった。
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