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第43話 このお方には敵わない
アルロード様は意味ありげに笑ってオレを見た。
「僕はルキノが『あのお方』のことを話す時のキラキラ輝くような笑顔がとても好きだったんだけれど、僕と婚約してからまったく話してくれないんだよ」
「っ!!!」
な、何を急に。
だって、『あのお方』がアルロード様だって、アルロード様はもう知ってるでしょ!
なのに、面と向かってまたおんなじテンションで言うの無理に決まってるじゃん!?
真っ赤になってあわあわするオレを、ドルフ達が不憫そうに見てくるのがさらにいたたまれない。
「ああ……」
「それは仕方ないかも」
「ですねぇ」
「そうだろうか。ねぇルキノ、たまにでいいから、あの熱量で愛を叫んでくれると嬉しいんだけれど」
にっこりと笑うアルロード様の様子に、さすがに皆もオレが語る『あのお方』がアルロード様のことだとバレていると分かったらしい。ドルフなんてあからさまにやれやれ、って顔してるし。
「全力で推し語りしてやれ」
「頑張ってくださいまし」
「役得ですわよ」
口々にそう言いながら去って行ってしまった。
「ね、ルキノ。愛を叫んでくれる?」
「……はい……!!!」
もはやそう答えるしかできない。
甘々すぎて死にそう。
強くて優しくて麗しくて時に儚げで、騎士道精神に満ちあふれた高潔な振る舞いがいつも壮絶に格好良いオレの最愛の推しは、思っていたよりもずっとずっと、恋人には甘々を求めるお方だったらしい。
恥ずかしいけど……でも、よく考えたらそれもいいかもしれない。
なんせ、番になったからってアルロード様の麗しさも、かっこよさも、優しさも、減るわけじゃないんだもんね。
むしろ迸るオレの「アルロード様、素敵!!!」の気持ちをいつでも語りまくれるんだと考えれば、ものすごくラッキーなのかもしれない。
なんだ、めちゃくちゃ楽しみになってきた。
やっぱりオレの旦那様、最高の推し様だった!!!
「今日から、全力で推し語りさせていただきます!!」
急に目をらんらんと輝かせたオレを見て、アルロード様は一瞬目を丸くして、それから華やかに笑った。
「ありがとう、楽しみだ!」
そして、ちょっぴり頬を染めてこんなことを言う。
「今日はあの別邸に寄り道してもいいね。僕も、僕の大切な人の素敵なところを全力で話すから、楽しみにしていて欲しい」
「~~~~っ」
どう考えても面と向かって恥ずかしいことを言うつもりに違いない。
真っ赤になったオレに、「放課後が楽しみだね」と微笑んでから、アルロード様は行ってしまった。
ああ、どこまで行ってもこのお方には敵わない。
そう実感したオレだった。
【後書き】
これにて完結です!
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