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起
ソレは、突然だった。
「ハア?出ていくって?」
どう言う意味?と陽毅が昊の顔を見た。
朝食のバターロールを食べていた昊は面倒臭そうな顔でこう言う。
「その儘の意味」
と。
そして、手に持っていたバターロールを一口サイズに千切って、口の中に放り込んだ。
昊の為にコップに牛乳を注いでいた陽毅は、テーブルにソレらを置くと、
「意味が解らない」
そう言って、昊がバターロールを持っている方の手首を掴んだ。
ソレから、昊を諫めるように手首を強く握り締める。
陽毅の強情さは嫌って言うくらい昊は知っているから、
「だから、好きな人が出来たからその人と一緒に暮らすって言ってんの!」
そう早口で言って、陽毅の手を振り払って残りのバターロールを口にくわえた。
だが、陽毅は納得出来ないと言う顔で、
「何、言ってんの?そんなの許すハズないでしょう!?」
そう怒鳴り付ける。
話にならないと言う姿勢の陽毅の瞳は酷く据わっていて、流石の昊でも怯むくらいだった。
間が悪かった。
そう思ってももう遅い。
だが、仕切り直すにしても時間がない。
ココは強行突破だと昊は壁に掛かった時計の針を見ながら、
「ゆふすもゆふさないのも、ふめんのは、おふぇ!(許すも許さないも、決めるのは、俺!)」
そう言って勢いよく立ち上がった。
当然、陽毅は顔を真っ赤にして、
「昊!!」
と、もう一度昊の腕を掴みに掛かった。
陽毅の怒りはごもっとも。
だからと言って、陽毅の話を聞いても昊の意志は変わらない。
昊は身体を翻して陽毅の手を軽く交わした。
「もふ、いふね!(もう、いくね!)」
そう投げ捨てるように言うと、昊は椅子に掛けていたリュックを掴んで玄関に向かう。
「……ちょ、待って!!」
慌てて昊の後を追う陽毅にしてみたら、意味が解らないことばかりでどうしようもない。
納得いくように説明しろと言っても、昊はとりつく島もない状態で陽毅は昊の後を追った。
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