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起2
「昊!!待ちな…」
さい!!と言う陽毅の声を遮って、廊下の奥の部屋から出て来た大五郎の声が通る。
「朝っぱらから、何、騒いでんだ?」
「…げっ!!大五郎!!」
大五郎は逃げ腰の陽毅の首根っこを掴んで、また逆の手では廊下を走っていた昊の身体を捕まえた。
振り返るとソコには昊の大好きな大五郎の姿があって、ソレを目にした昊はぱあっと花咲いた顔で大五郎を見る。
大五郎はそんな昊をひょいっと持ち上げ、肩口に担ぎ上げた。
「きゃぁ♪うさごろう、お早う♪」
「おう、お早うさん」
きゃっきゃはしゃぐ昊を諸ともせず、大五郎はもう片方の手で掴んでいた陽毅に呆れる。
「毎回毎回思うんだが、テメーは人ん家で何してやがるんだ?」
そして、
「飯の心配は要らねぇ、飯は轟さん(家政婦)に頼んでるんだ。テメーの出番なんかねぇって言ってるだろうが?」
と言うと昊を担いだ儘、ぽいっと陽毅を玄関から放り出した。
大五郎は一連の動作のように、陽毅の靴と上着をも放り投げる。
陽毅はソレをあわあわとキャッチしていた。
大五郎はそんな陽毅に、
「昊を気に入ってるかどうか知らねぇが、あんまし昊にちょっかい出してると出入り禁止どころか、接触禁止にすんからな?」
言うことは?と軽蔑した白い目で睨んで、陽毅を押し黙らせる。
後ろめたい陽毅はバツの悪い顔で靴を履き、大五郎宅から出ていった。
大五郎に何も言えないのは、陽毅の絶賛片想い中だからだ。
「全く、油断も隙もねぇ野郎だ」
溜め息を一つ付いて玄関の扉を閉めながら、今度は肩に担いだ昊を見た。
「で、陽毅と何してたんだ?」
昊はニコニコした顔で、
「ふうりん(不倫)ゴッコ♪俺、ハルキと付き合ってんの」
でも、俺、うさごろうが好きだからハルキとバイバイするの♪
と、ソレはソレは可愛いことを言う。
「そう、じゃ、このリュックは?」
外いきのリュックを指差すと、昊は「お着替えセットが入ってんの」と嬉しそうに答える。
「俺、今日、うさごろうのお部屋にお泊まりするの♪」
昊は玄関の直ぐ隣にある大五郎の部屋を人指し指で指して、ニコニコとそう言うが、
「悪りぃな、あの部屋はお泊まり禁止だ」
仕事用だから入れねぇよと、大五郎が言うと昊の顔がしゅんとなってしまった。
「入れないの?」
「あーあ、入れねぇ」
大事なもんがあるからなと言えば、更にしゅんとなってしまう。
「うさごろう、俺のこと嫌い?」
「嫌いじゃねぇよ。大好きだぜ♪」
大五郎は昊の頭を撫でて、チュッと額に軽く口付けをすると、
「うさごろう♪俺も♪俺も♪」
しゅんとなっていた昊が突然顔を上げて、大五郎の額にチューをさせろとせがんむ。
昊は嬉しいことは倍にして返したがるのだ。
大五郎はホント、可愛いなとそんなに昊の身体をぎゅっと抱き締めた。
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