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【最終回】幸せを抱きしめて――未来への扉
レセプションが終わって、俺たちはホテルの部屋に戻った。
「疲れたー」
「お疲れ様」
拓実がベッドに倒れ込み、俺も隣に座る。
「でも、良い式だったな」
拓実が嬉しそうに言う。
「うん」
俺も頷き、タキシードのジャケットを脱いでネクタイを緩める。
「……これで、俺たち夫婦なんだな」
拓実がしみじみと言う。
「夫婦、か」
その言葉を口にすると、じんわりと実感が湧いてくる。
「実感ある?」
「……ちょっとずつ」
俺が答えると、拓実が笑った。
「俺もまだ、夢みたいだ」
拓実が起き上がって、俺の手を取る。
「でも、これは現実なんだよな」
拓実が俺の薬指にある指輪に触れる。
俺も拓実の指輪に触れた。
「これから、よろしくな」
「うん。よろしく」
拓実がそっと俺を抱き寄せる。その温もりが心地よくて、安心して。
今日一日の緊張が解けて、自然と体が拓実に委ねられていく。
「好きだよ、遥」
「……俺も」
拓実が優しくキスをしてくる。なぜか涙が出そうになった。
「お前、泣いてる?」
「泣いてない」
「嘘つけ」
拓実が優しく頭を撫でる。
「……ちょっとだけ」
俺が素直に答えると、拓実が笑った。
「泣き虫だな」
「うるさい」
二人で笑った。
「シャワー、浴びる?」
拓実が優しく聞いてくる。
「……後で」
「じゃあ、今はゆっくりしよう」
拓実はまたベッドに横になり、目を閉じる。
俺はそっと手を離して、窓のほうへ歩いた。
ニューヨークの夜景が静かに光を落としている。
「父さん、母さん」
小さく呟く。
「俺、幸せになったよ」
拓実という、大切な人と出会えて。
家族を作ることができて。
「ありがとう」
――これから、どんな未来が待っているんだろう。
でも、怖くない。
拓実と一緒なら、どんな未来でも大丈夫。
「遥」
拓実が呼ぶ声が聞こえる。
「今行く」
俺は笑顔で振り返った。
これが、俺たちの新しい人生。
そして、これからもずっと続く、幸せな日々。
End.
【あとがき・続編のお知らせ】
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。
『イケメン社長に拾われて溺愛されてます ~今日もずっと君だけのもの~』
本編をもって【完結】となります。
支えてくださった皆様のおかげで、最後まで書ききることができました。
本当にありがとうございます。
そして――
彼らの物語は、〈新章〉として続きます。
【新作】
『リスタート・ショコラ―拾われた俺、溺愛されてます―世界でいちばん甘い場所は、あなたの隣。』
新婚旅行を終え、帰国した拓実と遥の日常には、ささやかな波紋と、優しい奇跡が訪れます。
――拓実の祖母・潔が経営するカフェ「madoca」。
そこで遥が出会ったのは、新しいスタッフ・花村環(はなむら たまき)。
彼はかつて恋人に裏切られ、夢を失った元天才パティシエ。
そして、そんな環の前に現れるのは、冷静沈着で完璧な男・神崎透(かんざき とおる)。
透は優しく甘く、ときにSっ気のあるスパダリ探偵。
彼らの出会いが、新たな“再生”の物語を紡ぎます。
イケメン社長×編集者
スパダリ探偵×天才パティシエ
二組のカップルがそれぞれの想いを胸に描く、新たな溺愛の章が始まります。
――復讐と再生、そして愛。
過去の痛みは、誰かに寄り添われることで、未来の強さへと変わる。
※別サイトにて先行投稿しております。
これからも見守っていただけたら嬉しいです。
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
砂原 紗藍
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