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独章 禍根の矛先

 それは、もう三年も前のことだ。  凍らせて塞いだ心の穴が、時折、溶けて風を通す。  その度、忘れたはずの名が、胸を締めつけてくる。  もう、見ることも叶わない者への恋慕。  そう呼ぶほかのない想いが、胸の奥に張り付いて離れない。  その度に、会いたいと思う。  手をつなぎたい。  一緒に笑いたい。  いつも一緒だったのに。  ずっと、一緒だと約束したのに、もう、応えてはくれない。  息を吸うたびに、胸の奥が鳴動する。 「いきなさい」  彼は、そう言った。  生きなさい、と言われたから、日影は生きている。  行きなさい、と言われたから、日影は彼の行く先についてきた。 「谷戸(やと)……」  呼んでも、返る声はない。  その事実に、日影は何度も心を抉られる。  痛くて、苦しい。  どうして、連れて行ってはくれなかったのか。  そう思う自分を、赦せないまま――胸の底に、鈍い憎しみが痕を曳く。

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