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第13話

雪景色の別荘にて、2日目。 「ちょりと、いいか?作戦通りに・・・」 「うん・・・!」 広い庭は雪で真っ白だった上に、昨夜また少し雪が降ってふかふかだ。 俺と玲央(れお)はお揃いのダウンジャケットと手袋、裏起毛の撥水カーゴパンツを着て、大量の雪玉を作っていた。 「そろそろ昼飯だって呼びにくるから、躊躇わず撃て」 「まかせて」 そう、テラスに出て来たオオカミを雪玉でやっつける作戦だ。 俺は雪玉を持てるだけ持って、さっき作った雪だるまの後ろに隠れる。 玲央の予想ではりっくんが出てくるはず。 カイだったとしても、容赦はしない。 「玲央ー、ちょりとー、お昼ご飯だよー!」 りっくんだ! 「なあシドぉ、これ見てぇ」 「なあに?なにか居た?」 玲央がりっくんを誘い出し、俺が横から雪玉を投げる。 顔を狙って・・・! 「おりゃ!」 「おっと」 「「なっ!?」」 りっくんは、雪玉を右手で受け止め、ぐしゃっと握り潰した。 まじか・・・。 「ちょりと、気配は上手に消せてたけど、投げる時に声出しちゃだめだよ」 「く・・・っそぉ・・・」 「ちょりと、隠れろ!次が来る!」 玲央がりっくんの腕を掴んで足止めしてる隙に、俺は慌てて雪だるまの後ろに隠れ、雪玉を握る。 「あれ、璃都(りと)は?」 「あっちで雪うさぎ作ってる」 「そう?」 玲央が雪だるまとは反対方向を指差し、カイが俺に背を向けた。 今だ・・・! 「おりゃ!」 「ふふ、声出しちゃだめだよ、璃都」 「「あっ!?」」 カイの後頭部に向かって投げ付けた雪玉は、少し首を傾げて躱され、左手で受け止められてしまった。 掴んだ雪玉を持ったまま、雪だるまの横で膝を突く俺に近付いてくるカイ。 「逃げろちょりと!」 「玲央・・・でも義従兄弟(にいさん)を置いて逃げるなんて・・・っ!」 「俺に構わず逃げ・・・っ!?」 俺を逃がそうとする玲央をりっくんが肩に(かつ)いで笑った。 「大人しく投降しろ。お義兄(にい)ちゃんがどうなってもいいのか?」 完全に悪人口調だ。 この状況、俺たちに勝ち目なんて・・・。 「さあ、諦めてこっちにおいで?」 「く・・・っ」 持っていた雪玉を握り潰し、俺に向かって手を差し伸べるカイと睨み合い、じりじりと後退しようとした時だった。 「うあっ!?」 「っしゃあ!」 玲央が、カーゴパンツのカーゴポケットに忍ばせていた雪玉をりっくんの襟の中に捩じ込んだ。 (ひる)んだりっくんの肩から逃れ、そのままもう1つ持っていた雪玉をカイに投げる。 「往生際の悪い・・・」 玲央の投げた雪玉を躱し、俺から視線を離すカイ。 玲央の作ってくれたチャンスを逃す訳にはいかない・・・! 「くらえっ!」 「っ!?」 両手に持った雪玉を、そのままカイの首にぐしゃり。 勝った・・・!! 「まったくぅ、服の中に入れるなんて酷いよ玲央ぉ」 「ズボンから裾出して、雪落とせって」 玲央がりっくんの背中に入れた雪を出してあげてる。 俺も、カイの首にぐしゃってした雪、はらってやんないと。 「カイ、ごめんね」 「いいよ、璃都たちが楽しそうでなにより」 俺たちが勝手に始めた戦争ごっこに、何も聞かず参加してくれてありがと。 勝ったし、楽しかったし、満足。 「それじゃ、脱ごうか?」 部屋に入ってダウンジャケットを脱ぎ、わーいご飯だーとソファに向かおうとする俺と玲央は、旦那たちによって止められた。 「「下もだよ」」 え、カーゴパンツも脱ぐの? そうすると俺も玲央も、少し大きめのゆるっとしたセーターと、パンツと靴下だけになるんだけど? まさか・・・。 「玲央のあんよあったかーい」 「ひいっ!?冷てぇ!」 玲央が中途半端な格好のまま、りっくんの膝上に座らされ、太股(ふともも)を撫でられてる。 俺もカーゴパンツを脱がされ、同じようにカイの膝上に座らされた。 「か、カイ、待って・・・」 「璃都はあんよも可愛いね」 「ひうっ!?冷たっ!」 嫁の脚で暖を取るなあっ!! ─────── 「年忘れ仮想大会ー!」 「わー・・・?」 雪玉戦争の後、昼食、歓談、おやつを済ませて未だズボンを穿かせてもらえないままの嫁2人でリビングのソファに座ってる。 これから、玲央が言い出した年忘れ仮想大会なるものが始まるらしい。 「安心しろちょりと、今回仮装するのは俺たちじゃない」 「え?・・・って事は」 「シドとカイザルさんにコスプレさせる」 「おお!」 あのイケメンスパダリオオカミたちにコスプレさせんの? え、なに着せんの? 「3着ずつ、用意しました」 「そんなに?・・・あ、あのデカいキャリーバッグって」 「オオカミ用コスプレ衣装です」 3泊4日にしても、荷物多すぎだなって思ってたんだよな。 今、旦那たちは隣の和室で着替えてるらしい。 なに着て登場するんだろ。 「シドぉ、着替えたぁ?」 「はーい」 「ではご登場いただきましょう!拍手でお迎えください、リシド・ルプスさんとカイザル・ルプスさんです!」 「わー!」 嫁2人の拍手に迎えられ登場したのは、執事服(ロングテールコート)を着てモノクルをしたオオカミ執事たち。 ・・・え、ちょっと待って。 「仕事出来そう・・・っ!」 「門限厳しそう・・・」 俺は好意的な感想を述べたのに、玲央は現実的な感想を・・・。 確かに、門限厳しいってゆーか、外出自体許さなそう・・・。 「璃都お嬢様、ロイヤルミルクティはいかがですか?」 「わぁ、ありがと。お嬢様はやめて」 「玲央お嬢様、今年は外出禁止です」 「なんでだよっ!」 2人とも、似合ってるし、かっこいい。 いいなー、俺もどうせコスプレするならかっこいいやつがいい・・・。 「ねえ玲央、この衣装ちょーだい?」 「おう、持って帰って家でも着てもらえ」 「執事とお嬢様プレイがお望みですか?」 「プレイって言うな」 一頻(ひとしき)りオオカミ執事を楽しんでから、2着目に着替えてもらう事に。 次はどんなコスプレだろ。 「次の患者さんどーぞ」 「今日はどうしたの?お熱かな?」 登場したのは、色違いのスクラブに白衣、首には聴診器をかけ、メガネをしたお医者さんたち。 カイの俺に対する対応が小児科医っぽいのも気になるけど、りっくんのお医者さん姿は・・・。 「胡散臭い」 「こぉら、なんて事言うの。そんな事言う子にはお注射しちゃうよ?」 俺が敢えて口にしなかった言葉を迷わず口走る玲央。 お注射って・・・胡散臭いってゆーより変態臭い。 「璃都ちゃんも、お注射欲しい?」 「いらない」 似合ってるけど、この衣装は返そう。 つか、なんでこの衣装選んだ? 「はい次ぃ!着替えてきて!」 「「はーい」」 散々触診された後、なんとか医者オオカミを和室へ押し戻した。 俺も玲央もぐったりだ。 「ねえ、次の衣装どんなの?こっちの立場が危うくなるようなの、困るんだけど」 「3着目は・・・大丈夫、たぶん。かっこいいだけだと思う」 なんだよ、かっこいいだけの衣装って? 着るのが難しいのか、なかなか出てこないけど・・・。 オオカミ執事に淹れてもらったロイヤルミルクティを飲んで待ってたら、マントを羽織った厳つい軍服姿のオオカミたちが入って来てカップを落としそうになった。 「おー!すっげぇ似合う!」 玲央は大喜び。 こーゆーの、好きなんだ? 俺は・・・ちょっと、いや、かなり恐いんですけど・・・。 2人とも、にこりともせず、軍人になりきってるし。 「ご命令とあらば、即座に敵陣を殲滅して参ります」 「うむ!」 りっくんも玲央もノリノリだ。 「璃都元帥、いかがされましたか」 「げ、元帥?・・・ぃや・・・迫力が・・・」 無表情のイケメンオオカミ、恐い・・・と思ってたら、軍服姿のカイが俺の手を取って言った。 「例え世界が敵に回ろうとも、全て駆逐して君を護る」 「んぎゅ・・・っ!」 かっこ良過ぎて変な声出たあっ。 軍服(これ)ももらっとこ・・・。

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