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本編後 夏夜の熱 2 ※
夜更けの部屋には、蝋燭の火が静かに灯っていた。
揺らめく光が天蓋を照らし、風に揺れたカーテンの向こうで、木立のざわめきが聞こえる。
夏の夜気には花蜜の香りが混じって漂っていた。
緋色の絨毯には衣服が乱雑に落ち、点々と足跡を残す。
大きなベッドの上では、裸のふたりが隙間なく絡み合い激しく唇を重ねていた。
熱を帯びた呼吸が混ざり、心臓の音が互いを打つ。
早く一つになってしまいたいと胸の奥が叫んでいた。
キリエルはカシアンの胴に跨ると、後孔へ立ち上がった切先を押し当てる。
「……俺にも、お前をくれよ」
高揚した肌が月明かりに浮かび、黄金の瞳が淡く光った。
カシアンの腹に手をつき、膝を立てた状態でゆっくりと腰を下ろす。
疼きを満たすように肉棒をきつく締め付け、甘い刺激を味わうようにじっくりと挿入する。
「──……あぁ、いい……っ」
肉壁が熱のかたまりに絡みつき、ぞくぞくと背筋が震える。
見下ろした皇太子の顔は情けないほど眉が下がり、呼吸が浅くなっている。
まるで自分が犯しているみたいだと、少し可笑しくなって目を細める。
この男の弱点は、いつだってキリエル自身なのだ。
「キ、リエル…………っ」
「……んー……?ふっ……きもち、よさそ……っ」
支えにしていた手を緩め、カシアンの脇腹を擽るように撫でる。
息が上がっていく様子がいやらしい。
雄の本能か、ベッドに沈む腰が小さく揺れている。
応えるようにさらに挿入を深めると、孔の奥に先端がゴツンと当たった。
強い刺激に思わず前のめりに倒れてシーツに手をつく。
甘い悲鳴とともに涎がこぼれ落ちた。
肉をきつく締め上げながら、甘美な絶頂を嚙み殺す。
「……っ、キリエル……こっちを向け」
耳元の掠れた囁きに導かれるように、ぼやけた思考のまま顔を向けた。
後頭部を手のひらで押されながら口を吸われる。
厚い舌が腔内を探り、舌同士を擦り合わせる。
上も下も深くまで満たされ、絶頂の余韻が治まらない。
手足がびくびくと震え、シーツの波を滑っていく。
「……ん、ふぅ、ぁ、んう……♡」
夢中になって舌を味わっていると、カシアンの両手が力の抜けた腰を掴む。
大きな悦楽の予感に肌が粟立った。
口を塞がれたまま、剛直をずるりと抜かれ、すぐにずぶずぶと押し込められる。
何度も摩擦され温度を上げていく肉壁が一方的な快楽を脳に伝える。
喘ぎは舌に塞がれくぐもり、全身が汗で濡れる。
「……ぐっ、このまま、出すぞ……」
掴んだ腰を下に押し付けたまま、今度は激しいピストンで肉壺を犯す。
ベッドが軋むほどの力強さを、キリエルは全身で受け止める。
バツバツと肌がぶつかる音が部屋に響く。
ふたりの荒い息と喘ぎ声が重なり、激しくなる動きがベッドの天蓋を揺らした。
キリエルはカシアンの耳に舌を這わせ、蕩けた声を吹き込む。
「……あ、あぁっ、なか、あついの……出せっ……♡」
瞬間、奥まで挿入された剛直が白濁を勢いよく吐き出した。
注ぎ込まれた腹の中が熱く滾る。
血管を浮かせて射精の快感を耐える男の顔に壮絶な色気を感じ、いまだ硬い陰茎を甘くを締め付ける。
「……おい、……あまり、いじめてくれるな……っ」
カシアンは照れたように眉をひそめ体を起こすと、そのままキリエルを後ろに押し倒す。
形勢が逆転するも、その行動すら躍起になっているようで、キリエルは愛おしさを募らせた。
「……なにを笑っている」
「はぁ……、いや、可愛いなと思って」
「…………余裕だな?」
「はは、ムキになるなよ……っあ!?」
尻を抱え上げられたまま、再び力強く腰が打ち付けられる。
二度目の吐精を経てもカシアンのペニスは硬度を保ち、肉壁を擦り上げる。
走る快感に背中が強張り、肩甲骨がシーツから浮く。
分厚い手のひらが腰骨を掴み、陰茎をすべて蜜壺におさめようと、白い腰がグラインドする。
結腸口をぐりぐりと刺激され、濡れた体が悩ましげにくねる。
期待と恐怖が入り混じり鼓動が大きくなる。
これ以上はまだ許したことがなかった。
「……ああっ!……っも、はいらな……っ」
「そうか?痛くはなさそうだ……」
ぬちゃ、ぬちゃ。ドアをノックするように、奥を小刻みに叩く。
注がれた白濁が粘ついた水音を響かせ、動くたびにシーツに溢れていく。
最奥がおもむろにほぐれ、亀頭に吸い付くように蠢き出す。
その先で得る壮絶な快感を、腹の奥が覚えている。
「……ひぃ"っ、あ"……だめ、だめ……!」
「……っ挿れるぞ……」
腰同士が密着し、熱い剛直が結腸へ侵入していく。
ぐぷっ、と弁を抜けたような感覚の後に、狂うような快感が体の中で暴れる。
「ーー〜〜ア"あ"あ"っ!?ぐぅッ、ぬ"、けぇ……!あ"あ"ーーッ……!!」
背中をそり返らせ、手足でシーツを乱す。
萎えたキリエルのペニスから、精液が漏れ出し、浮いた腹筋の溝を辿って落ちていく。
「……はぁっ……自分から、押し付けているのに……?」
カシアンは硬いペニスを差し出すように腰を突き出したまま、髪をかきあげて笑った。
分厚い手のひらが突っ張った褐色の脚を撫でる。
キリエルは絶頂から降りられず、ペニスを深く飲み込んで腰をカクカクと震わせる。
「……とま"れ、ってぇ……ッ♡あ"、ア"、奥ぅ"、お"ぉ"……っ♡」
焦点を失った黄金の瞳が瞼の裏に隠れる。
悲鳴は甘さを増し、体が悦楽に服従していく。
手足の指でシーツを握り、飲み込んだ灼熱が律動を始めるのを待ち構える。
カシアンは腰をゆっくりと引き、結腸の締め付けを味わうように奥を犯す。
熟した肉壺は熱く濡れて締まり、カシアンの劣情を余すことなく受け止める。
「……っは、きついな……つ」
欲望の火が燃え上がっていく。
肌がぶつかり合う乾いた音と白濁の泡立つ水音、腹の奥をペニスが蹂躙する音。
嬌声すら上げられないほどの強烈な快感がキリエルを襲い、思考が溶けて散った。
腹の皮膚のすぐ下まで突き入れられているような気がして、下腹が熱く痺れた。
萎えたペニスが律動に合わせて柔らかく震え、透明な液をとろとろと溢している。
雄としての役割を失った様を晒し、その羞恥でまた身を熱くする。
すっかり性器となった尻穴が雄肉に媚びて縋り付いてしまう。
自分に欲情して硬く膨らんだ熱が愛おしい。
痙攣する肉壁をごつごつと擦られ、終わりのないオーガズムが身体中を駆け巡った。
「ア"が……〜〜ッ!ま"たぁ……ぅぎッ♡っあ"あ"ーー……♡」
「……あぁ……っ、なか、あつい……♡溶けそうだ……っ」
一層強くなるピストンがキリエルの性感帯を嬲る。
視界が明滅し、耐え難い快楽にパニックを起こす。
震える脚をカシアンの腰に巻きつかせ動きを止めようとするも、カシアンの鼻息を荒くするだけだった。
「キリエル……ッ、キリエル……!」
余裕のない掠れた声が白む意識を呼び戻す。
腰の動きは早くなり、頂点に向かって駆け上る。
ごちゅんごちゅんと腹の中でペニスが暴れて最奥を容赦なく抉る。
結腸の奥まで入り込んだところで、滾る精液が絞り出された。
腹の中が濡れる感覚に、とうとう体の制御を失って手脚がシーツへ落ちた。
しかし深く嵌まったペニスが穴をひっかけ、快感から逃れられない。
「……あ"……ふぅ"……ッ♡……ぉ"……♡」
カシアンはかすかに膨らんで見えるその腹を優しく撫でると、ふやけた肉壺から濡れたペニスを引き抜く。
注がれた白濁がぼたぼたとシーツに落ち、キリエルの体が甘く震えた。
ゆっくりとベッドへ寝かせるも、割り開かれた脚の奥で、縁の腫れた後孔がかすかに口を開けて雄肉を恋しがってひくつく。
「…………抗いがたいな……」
荒い息が近づき、労わるように舌を絡ませ合う。
いまだ粟立つブロンズの肌を鎮めるように温かく抱き込み、耳元で「愛している」と告げた。
瞳を閉じかけたキリエルが「おれも」と返すと、分厚い手が汗ばんだ黒髪を撫でる。
外は次第に白み始め、夜気が熱気を冷ましていく。
柔らかい夏風に揺れる天蓋の中で、ふたつの影は寄り添ったまま眠りについた。
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