66 / 66

第66話

「俺は、由樹が思うほどいい男じゃないし、さっき言ったみたいにストーカーっぽいこともしてるし、正直由樹に釣り合わないんじゃないかと思ってる」 「そんな、それは俺の台詞だよ……俺みたいな普通の男をここまで大事に思ってくれるの、遼ぐらいだよ」  萩山は崎田の手を取って、話を続ける。 「遼が信じてくれるまで何回でも言うよ。俺、遼のことが好き。愛してる」 「っ……」  目を閉じて今にも泣き出しそうな表情になった崎田は、萩山の手を強く握り返し、彼の顔をじっと見る。 「……俺も、由樹のこと愛してる。もう、離してやれない……離したく、ない」 「うん、いいよ。俺も遼と離れられる気がしないし」 「はは……由樹は強いな」  お互い引き寄せられるように抱き合って、しばらくの間時間を過ごす。  密着している部分から互いの体温と鼓動が伝わってきて、この上ない幸せを二人は噛み締めていた。 「あの、こんな状況で言うのもどうかと思うんだけど……由樹と、したくなった……」  崎田が頬を赤らめながら萩山の耳元で囁く。本当にごめん、と視線を逸らした崎田の頬を両手で包み込んだ萩山は、笑顔で応えた。 「……俺も。αとかΩとか……そういうの抜きで、恋人同士のえっちしようよ」 「歯止め、効かなくなったらごめん」 「いいよ。そういうのも、ちょっと好きだから……」  下を向いてもごもごと言う萩山を見て、崎田は彼を強く抱き寄せる。  その後腰をつつ、となぞると萩山の身体がぴくりと反応した。  リップ音だけが響く部屋の中で、ソファーに組み敷かれた萩山の力が少しずつ抜けていく。  二人を繋ぐ銀の糸がふつりと切れたあと、崎田がどこかから首輪を取り出した。 「……由樹が急にヒート来ない限りは番にはならないけど、この後のことをちゃんとしてからしっかり番になりたくて……つけて、くれるか?」 「うん。本当に、ありがとうな」  レザーでできた細長い首輪をつけると、ひやりとした感触がしたがすぐに体温で温まり馴染む。  それを見た崎田は、愛おしそうに萩山を見つめてから、彼をお姫様抱っこした。 「わっ……!」 「悪い。ソファーじゃなくて、ちゃんとベッドでしたくて」  必死にしがみつく萩山の身体に、崎田の鼓動がどくどくと伝わる。その速さが自分と同じなことに気づいた萩山は、これからどうなるか考えて、期待から身震いした。

ともだちにシェアしよう!