「普通、男が感じるのって、射精した時じゃないですか」 俺がそう聞けば、保先輩は顔を引き攣らせながら頷いた。 ドン引きしている。 そりゃそうだろう。 だがここで一気に畳み掛けなければ、多分もう一生こんなチャンスはやってこない。 先輩はいつも攻めるのが好きで、防衛が苦手だ。 自分が攻められると脳の回転が正しく機能しなくなり、悪手やミスが多くなる。 まぁ、そんな単純でわかりやすいところも好きなんだけど。 「でも男はそれ以外に、前立腺を刺激するとめっちゃ感じるらしいんです」 「前立腺？」 「はい」 ドン引きしているのに、好奇心いっぱいな保先輩は俺が持っていたアダルトグッズに手を伸ばした。 可愛い、でも逆に心配になる。 好奇心は猫を殺すって諺を知らないのだろうか？ 「今、好きな女とかいないなら、一人の時くらいこういう趣向を凝らしてみてもいいんじゃないですか？」 「……修平はいろんなこと知ってるなー」 保先輩を好きになった時点で色々調べましたから。 「俺、セックスよりオナるほうが好きなんですよね」 今のところ、嘘ではない。 特に、保先輩をオカズにする自慰は最高だ。 本人に突っ込めたら、自慰よりセックスの方が好きになるんだろうけど。 「修平は使ったことあんの？」 「いや、まだないです。一人じゃ流石に勇気が出なくて」 「そっか。まぁ、気持ちはわかる」 ごくり、とどちらかの、いやふたりの喉を鳴らした音が響いた。 「──で？どうすればいいの？」 保先輩が、食いついた。 恥ずかしそうにしながらも、半分投げやりだ。 俺に先日扱かれてヌいたから、もうこれ以上羞恥心を煽られることなんて、ないと思っているんだろう。 俺にとっては、またとないチャンスだ。 ここからどう攻めて、保先輩を落としていくか。 今は山場で、俺の動き方次第で戦局が変わってくる。 「……保先輩、今日のバイトって何時からですか？」 「今日？　えーと、十八時」 まだ十五時。三時間ある。 「まずは、俺の家に行きましょう」 疑問系ではなく、言い切って立ち上がる。 　 「え！？　ちょっと、修平の家ってどこだよ！？」 目論見通り、保先輩はわたわたと帰宅の準備をしだした。 「学生寮なんで、直ぐそこです」 「マジで？　抽選に当たったのか、羨まし！」 「あはは、すみません。あそこ、綺麗なんですけど、音が結構漏れるのがちょっと嫌なんですよね」　　 「へー、そうなんだ。でも家賃格安だから、それくらいは我慢しないと」 「その通りなんですけどね」 俺はただ、予防線を張っただけだ。 保先輩の喘ぎ声は、誰にも聞かれたくないから。