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第21話 何故か四人でファミレス(side保)

ななな、何故こんな変な事態に……! 「俺、梅サワー」 「お前、ここで飲むのか?」 「だって、さっきまで居酒屋気分だったじゃん。アルコール摂れると信じている身体を裏切ることは出来ないっ!!」 キリッと先輩に答える人は、中野さんと言って、先輩と同じく就活生らしい。 俺と先輩は、お互いの連れ……修平と中野さんを紹介して、何故か世間話に花を咲かせていた。 「へぇ、二人共直ぐそこの大学かぁ」 「ええ、同じ将棋サークルなんです」 「修平ガタイ良いから、文化サークルは勿体なくね?」 「柔道部も掛け持ちしているんですよ」 「ああ、そんな感じだよな~」 「……」 いつの間にか、先輩も修平を呼び捨てにしている始末。 先輩と修平は和やか~に会話をして、俺は口を挟めない。が、ここで中野さんが爆弾を落とした。 「で? 保君がこいつの元カノ寝取ったって話は?」 ぶほっ! と、俺はジンジャーを吹き出しそうになる。 地味に鼻が痛くて、修平が「保先輩、大丈夫ですか?」とティッシュを渡してくれた。 「それな」 先輩の目が、どんよりと曇る。 「いやさ、俺が高校三年生の時に、元カノが急に『別れたい』って言ってきてさ。で、理由聞いたら『保君と浮気した、良心が咎めてこれ以上付き合えない、ごめん』って」 「……」 そんなふうに先輩に言ってたんだ、と俺は半眼になる。 「で、保に聞いても『すみません』しか言わないじゃん? マジでヤったんだって、ショックでさぁ。その元カノとはそれからしばらくは付き合ってたんだけど、大学が別れてから結局自然消滅した。けど俺、保を可愛がってた自覚あったからマジで人間不信でさー」 「すみません……」 俺は頭を下げる。 「保先輩、実際のところ、どうだったんですか?」 「……先輩の前で、それ聞く?」 俺は苦笑いして修平を咎めた。 「や、だって、結局のところ、謝罪よりそれを聞きたくって、でも聞けないからこんなに拗れたんじゃないですか?」 そう返され、俺は先輩を見る。 ただでさえ、先輩の元カノと寝た時点で先輩を傷付けたから、追い打ちをかけるような話はしたくないのに。 ただ、俺が悪い、で良いのに。 俺は、膝の上で握り拳を作った。 「先輩は、保先輩のことも好きだったんですよ。片方の話だけ鵜呑みにするのはおかしいって、元カノさんと保先輩の話、どっちも聞いてから判断しようって考えてくれてるじゃないですか。その判断の機会を、保先輩はずっと与えないつもりですか?」 「あ……」 俺が先輩をもう一度見上げれば、先輩は頷いた。 そうか。 先輩は、過去のことに決着をつけたいのに、先に進みたいのに、ずっと俺からの話を聞くことが出来ずに胸の中にモヤモヤを抱えていたんだ。 修平に背中を押されて、俺は口を開いた。

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