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第65話 官能と煩悩と後悔と(side保)
「では、お先に失礼致します。保先輩、バイト頑張って下さい」
「……ん……」
ヤバイ。腰ダルイ。ヤり過ぎた。
や、お互い一発しかイってない筈なんだけど、色々オカシイ。
俺は裸のままぐったりして、綺麗に身支度を済ませ玄関で靴を履いた修平に、ベッドの上から手を振る。
修平の方は、あれだけ散々腰振ったくせに、疲れを見せるどころか活力に溢れていた。
晴れやかな笑顔でご機嫌な様子。
何この体力差。
怖い。
やっぱり普段の運動量の差だろうか。
色々ドロドロしていた俺をシャワーで綺麗にする余裕まである修平。
その間ずっとキスされて、尻に指を突っ込まれてローションを掻き出されていたけど、なんかもうそんなことを大人しく受け入れる自分も何なんだろう。
自分がわからなくなってきて、マジ恐怖。
「保先輩、今日のバイト上がりは何時ですか?」
「えーと、零時」
「遅くまで大変ですね。明日の大学の準備さえ持って来てくれれば、うちに泊まっても良いですから連絡下さい。……ああ、襲われる覚悟で来て下さいね」
「そんなん、余計寝れないだろ!」
俺がペイっと修平の方に枕を投げると、修平は大きく口を開けて笑った。
「はは、俺も月曜日の朝練あるので、襲うのも程々ですから、大丈夫です」
何が大丈夫です、だ! と思いながら、そうか、程々なのか……と少し残念な気分になり、そんな自分に気付いて驚愕する。
なんだよもう、本当に……!!
今度こそ修平は俺の家を後にし、部屋には俺と静寂だけが残された。
この六畳の部屋を広いと感じたことはないのに、修平がいなくなった瞬間、広く感じた。
む、無駄に身体デカいからな!!
修平がいるだけで圧迫感が凄い。同時に安心感も……いやいや、体格に恵まれてるよな。
分厚い胸板とか、背中にも筋肉ついてて、俺の二倍位ありそうなウエストとか、体格が良い分あそこもデカくて、それが挿入し てくると……いやいや、柔道着が似合うだろうな。
一人赤面しては頭を振り、先程与えられた官能と、それを思い出してしまう煩悩を振り払う。
修平は泊まっても良い、と言ってたけど。
──駄目だろ、やめておこう。
修平の気持ちを知っても尚、身体を繋げるなんて修平にとって失礼だ。
まだ告白に応えてないんだから、適度な距離感を保たなければ──。
『いくらでも俺を利用して下さい』
ふと修平の言葉を思い出して、俺は固まる。
同時に、ずくり、と尻が疼いた。
……痛みではなく、欲望で。
いや、そもそも俺をこんな身体にしたのは、修平だ。
お互いの身体を使ってお互いに自慰を楽しもうというところから始まっているのだから、修平にも責任がある。
修平の身体を利用するだけで、心を利用している訳じゃ……。
ああ、俺って最低最悪。
ため息をついた。
何で、修平の気持ちを知ってしまったのに、今朝は我慢出来なかったんだろう?
せめて知らなければ、お互い気持ち良くなるだけだと、割り切れたのに。
いくら後悔しても、もう遅い。
──そして、これからも。
あの官能を知ってしまった今、修平の肉棒を目の前に差し出されたら、それに縋らない自信はなかった。
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