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第66話 気持ち良くならない自慰(side保)【*】
「ふ、は……っ」
俺は一人、自室のベッドで自慰に耽っていた。
結局あれから五日間、俺は修平の家に行くことはなく過ごした。
行ったら、本当に自分が駄目になる気がしたから、必死で誘惑に耐えた。
修平の部屋に行けば、多分めちゃくちゃに愛して貰える。
──けど、それに溺れてしまえば、一人で頑張って俺をここまで育ててくれた母親に示しがつかない。
自分の気持ちを誤魔化しつつ大学に通い、バイトに明け暮れる。
将棋サークルの部屋にいても、修平も部活の方が忙しくなったようで、全然会えていなかった。
そこでやっと気付いた。
修平が会う努力をしてくれて初めて、俺達はあのサークル部屋で一緒の時間を過ごせていたのだと。
「ん……っ」
今まではパソコンにダウンロードしたヌき動画を見てシコっていたが、どうにもあまり気持ち良くなれなかった。
「修、平……っ」
そして最悪なことに、修平とのセックスを思い出しながら自分で自分を慰める。
中指をお尻に突き刺し、前を扱き続けた。
もっと……! 熱くて硬くて、太いモノが欲しい……っっ!!
はぁ、はぁ、と荒い息を吐きながら、眉間に皺を寄せて、修平のペニスをイメージする。
前立腺の辺りは自分の指だと引っ掻くのが精一杯で、気持ち良いとは程遠い。
「修平……っっ!」
俺の尻を、あの逞しい肉棒で貫いて、ぐちゃぐちゃに掻き混ぜて欲しいのに……っっ!!
物足りなさが強過ぎて、いまいち射精感が高まらないなか、スマホが動いた。
視線を走らせると、修平からのショートメッセージが届いていて、思わず固まった。
自慰をやめ手をしっかり洗ってから、スマホを手にする。
相手は修平だというのに、何だかやたらドキドキした。
『保先輩、金曜日の夜から土曜日って、お泊りに行っても良いですか?』
短いメッセージに、心が浮き立つ。
今日は木曜日。
明日の夜からか……。
俺からは行っていけない気がするけど、修平の方から来たいというのを止めることはない、よな……?
まるでデート前のワクワク感を自分が抱えたことに目を瞑り、『良いけど、金曜日の夜は遅いから、先に部屋で待っててくれると嬉しい』と送った。
直ぐに『了解です、バイト頑張って下さい。楽しみにしてます』と返ってきて、俺は帰宅予定時間と、鍵をポストに入れることと、ポストの暗証番号を送り返す。
スマホが落ち着くと、一人鼓動を早鐘のように鳴らしたままの自分だけが残された。
明日、会える……。
俺は自慰中だったこともすっかり忘れ、早く明日にならないかと、直ぐさま眠りについた。
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