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第203話 ブルース

 あのバーにみんなが集まっている。 「バンマスが亡くなったなんて。」 「浴びるほどラムを飲んだから、もう満足したかな?」  櫻子さんがピアノを弾いている。誰かがギターで合わせている。ベースギターも重なる。  松ちゃんのサックスが絡んで、哀愁を帯びる。 「人生はブルースだな。」  マスターがボソッと呟いた。  みんな心に涙を溜めて酒を呑む。  人の生き死には繰り返す。命は無始無終なのだ。初めなく終わり無い。  太郎は徹司公認となって、陸と一緒にいる。 晴れて18才になったから、陸のそばを離れない。 「大人っぽくなったね、俺の太郎。」 「うんうん、もう陸のそばを離れないよ。 ヤクザっていつ死ぬかわからないから、ずっとそばにいる。」  流星がワイングラスを運んで来た。 「二十歳にならないとお酒は飲めないんだけど、硬い事言わないで太郎も飲むでしょ?」  ベッドに陸を挟んで太郎と流星が座る。 「3人で暮らすのか?」 「そうだよ。いいよね、流星?」 「ハハハ、仕方ないから貸してやるよ、俺の陸。」 「たまには俺と流星が愛し合うのもアリだね。」  太郎が大胆な事を言う。 「おいおい、俺が仲間外れか?」  陸の困った顔がいい。 「こんな事になるなんて信じられない。」  太郎と流星がシャツを脱いだ。 二人の背中には見事なマリア観音が彫られていた。 「あーあ、おまえたち、堅気に戻れねえぞ。 徹司に殺されるなぁ。」  徹司と美弦は、仲良く暮らしている。 初めから二人だったようにピッタリ寄り添って。  零士と草太は犬のマックスと3人で暮らしている。  吉田は、親しくなった張大兄に 「張さんはおいくつなんですか? 文革や祖国の歴史にも詳しいけれど。」 「はい、今300才を超えたところネ。 C国四千年の歴史。侮れないデショ。」  吉田は開いた口がふさからなかった。 (俺は揶揄われたのか?)          ー 了 ー

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