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第202話 18才の太郎
光り輝く青春の体現者。太郎は大人になった。
海岸で犬を走らせている。
零士と草太、そして徹司と美弦が見守っている。リードを外して思い切り走るマックスと太郎。知らない人が見たら驚くデカい犬だ。
凶暴な顔をしている。アメリカン・マスチフ。
「こんな犬を放し飼いにしてはいけないよ。」
厳しい目で見られる。実は気の弱い犬だった。
闘犬に向かないので殺処分される所だった。
陸が仔犬の頃助けて零士と草太に預けた犬だ。
太郎が首に抱き付いた。マックスは嬉しそう。
小さな頃から一緒に育った。力が強くデカい犬だから零士でないと制御出来なかった。今は太郎にも草太にも懐いている。おとなしく言う事を聞く賢い犬だ。
「俺の弟だから。」
耳の後ろを掻いてやる。気持ちよさそうなマックス。
離れた所から秋吉が見ていた。犬と心を通わせる太郎が可愛い。
秋吉も年をとった。この孤独な男には数々の罪状がある。精神疾患のため刑事訴追されないのだ。後見人となっている張の力もある。
Cドラゴンは、日本では一目置かれた組織だった。C国共○党にも顔が利く張の位置は日本にとっても重要なのだ。
トクリュウと言われる新型犯罪組織も,実態を掴めない。警察は裏にCドラゴンがいるのはわかっている。
「はあ、はあ、もう無理!」
砂浜を走り疲れて、太郎の光る汗が眩しい。
マックスが尻尾を千切れるほど振りまくって吠えた。
「ワオーン!」
陸がやってきたのだ。
「覚えているんだな、命の恩人を。」
殺処分寸前の所を陸に助けられた。
犬はちゃんと覚えている。
デカい犬と抱き合って陸はうれしそうだ。
そばに秋吉が歩いてきた。
「私にも撫でさせてくれんか?」
「大丈夫かな。」
マックスはおとなしく秋吉に抱かれている。
「珍しいな。知らない人に抱かれておとなしくしてるなんて。」
犬と老人は抱き合って幸せそうだった。
「おじさん、また、海岸に来たら撫でてやってね。」
名残惜しそうに、秋吉は帰って行った。その後ろ姿は寂しそうだった。
飼い犬を殺されて食われた。心を通わせた少年を引き離された。可愛がっていた猫たちも寿命をまっとうして虹の橋を渡った。
その背中には哀愁が張り付いている。
彼は寂しそうだった。
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