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第1話 初体験 ***
「……これから、どうして欲しい?」
耳元でそう問われて、ゾワリと鳥肌が立つ。
目隠しをされて、視界は真っ暗だ。
両腕は後ろ手に拘束され、左右から伸びた縄で膝を開脚させられ、男なのに薄くヒラヒラした下着を装着した俺のペニスは、興奮でそそり立っている。
「さ、触って欲しい……っ」
「ください、だろ?」
「……触って、ください……!」
そう懇願すると、自分のペニスによって持ち上げられていた薄い布地がクイ、とずらされたのを感じた。
自身を押し込んでいた天井が取り払われ、喜んだペニスはふるん、と自由になる。
「触る前からお漏らししてるのか。だらしがないちんぽだな」
「あぅっ!」
親友だったはずのそいつ、土岐 飾音 は、俺のペニスをぐっと踏み付ける。
気持ちいいくらいの痛みによる快感で達しそうになって、俺は懸命に射精感をやり過ごそうとした。
「何、踏まれて感じてんの?この変態」
「ぐ、ぐりぐり、しないでぇ……っ!!」
やり過ごそうとしたのに、親友は見過ごしてくれない。
腹と足裏に挟まれた俺のペニスを扱くように、ゆっくりと足を上下に動かした。
飾音の足裏についた先走りが潤滑剤のように滑りをスムーズにし、圧倒的な快感が俺を襲う。
「イっちゃう、イっちゃうからぁ……っ!!」
「待てだよ、彬良 」
「うう……っ」
待てと人には言いながら、飾音の足は容赦なく動いて俺を昂らせていく。
「あっ! も、駄目、イく、イくぅ……っっ!!」
喜悦で溢れた涙が、目隠しされた眦からつう、と流れる。
しかし、発射するために玉がきゅうと収縮した瞬間、俺のペニスへの圧迫が消えた。
「あっ……」
すぅと引いてしまう快感。
トリガーとなる刺激を求めるように、腰が揺れた。
けれども、俺のペニスは力強く天を仰いでふるふると揺れるだけで、望んでいるものに触れることはない。
「待てだって言っただろ、彬良」
「……か、飾音ぇ……、お願い、も、イかせてく、ください……っ」
「は? 何、呼び捨てにしてんの?」
「ご、ごめんなさい、ご主人様」
「彬良から俺に、ご主人様になってくれってお願いしてきたんだから、きちんとわきまえろよ」
「はい……」
飾音の声は、やけに冷たく響いた。
しかし、そんな冷たい声に、俺の心は歓喜する。
――こんな身近に、俺の欲を満たしてくれる人がいたなんて。
「生意気なワンコに、ご褒美はあげられないな」
ふっと左右に開脚させられていた足の拘束がなくなり、身体が自由に動かせるようになった。
「尻こっち向けて」
「~~っっ」
俺は胸を期待に膨らませながらゴロリとうつ伏せになると、倒れ込むようにして上半身をベッドに沈め、下半身だけ高く掲げる。
パシン!
「ぁあっ!」
パシン! パシン!
「ひ、ぅう……っっ」
尻を叩かれ、ひりひりとした痛みが広がる。
痛いけど、それ以上に気持ち良い。
叩かれた悦びで、俺のペニスからポタポタ、とカウパーがシーツに零れた。
「これもご褒美になるのか。尻叩かれて喜ぶなんて、彬良は本当に、ドマゾだね」
「うう……っ」
飾音が動いた気配がして、髪を引っ張られた。
「口開けて」
言われた言葉を理解するより先に、喉奥まで一気に、熱く太い滾りを突っ込まれる。
苦しい。
けど、嬉しい。
「噛むなよ」
返事をすることも頷くことも出来ないまま、頭を持たれて激しく揺さぶられる。
えずきそうになるのを懸命に堪えながら、口内いっぱいに埋まっている飾音の男根に舌を這わせる努力をした。
口の中でぐんぐんと飾音のペニスはその体積を増し、嬉しくなる。
最後の仕上げとばかりに喉を使ってペニスを締め付けると、飾音は達する前に俺の口から自分の息子を抜いた。
涎も鼻水も出て酷い有様のままゴホゴホ、と咳き込みながら、ドロドロの精液を口内に放って貰えなかったことを少し残念に思う。
体内も犯して欲しかった。
「……んで、そんなに上手いんだよ。本当は今までも、他にご主人様がいたんじゃないのか?」
飾音はそう言いながら、俺のアイマスクを外した。
俺は瞑っていた瞳をうっすらと開けて、飾音を見上げる。
顎が少しおかしいが、噛み締めるようにしてゆっくりと言葉を発した。
「俺のご主人様は、飾音が初めてだから」
「ふーん。どうだか」
飾音の言葉の中に、ほんの僅かな嫉妬心が混じっているように感じられるのは、俺の願望だろうか。
同性愛者の飾音とは違い、俺にとって、男との行為はこれが初めてだ。
だから、飾音に命令されて、今日のプレイのために、毎日お尻の穴の拡張に努めてきた。
「彬良、尻の準備はできてる?」
「……ん」
飾音の問い掛けに、アナルがひくりと反応した。
「……エロ」
最初は違和感しかなかったのに、慣れてくると、快感を拾えるようになった。
俺にとって、痛くてもそれはご褒美だし、気持ち良くてもご褒美だ。
「早く、突っ込んで」
「言われなくても」
飾音はそう言うなり、冷たい液体を直接尻にかける。
粘着質なその液体を、尻とアナルに塗り広げた。
「毎日自分で広げて、偉かったな」
「……んっ」
こんな時だけ褒めるなんて、反則だ。
俺が喜んだ瞬間、お尻の入り口につぷ、と飾音の骨張った指が二本挿入される。
そのまま穴を広げるように指を動かされ、俺は悶える。
「あっ……♡」
なんだこれ。
以前指をゴム越しで入れられた時と、全然違う。
自分でアナルプラグを突っ込むのとも、全然違う。
「ふわふわトロトロ。まだ入り口は狭いけど、しっかり雄まんこに仕上がってる」
ぐちゅ♡ ぐちゅ♡ ぐちゅ♡
飾音の指が俺のアナルを掻き混ぜるたびに、入り口はヒクヒクと動いて指を締め付ける。
ぬぽッ♡
「あんっ……♡」
おもむろに指が引き抜かれたと思えば、もっと熱くて太いものが入り口に押し当てられる。
「……彬良。これを挿入し たらもう、親友には戻ってやらないけど」
「……っっ」
飾音と雅人 と、高校に大学とつるんで馬鹿をやってきた記憶が脳裏に蘇る。
親友には戻れない?
それは、困る。
俺にとって、飾音はなくてはならない存在だ。
「やっぱ、や……ああぅッ♡♡」
ぬぷぷぷ♡♡
飾音のペニスの先端がめり込んできた。
「馬鹿だな、彬良。イれなくても、もう戻れるわけないだろ。……こんな痴態 を俺に見せといて」
プラグとは違う質感と熱量に、息が止まる。
「彬良、力を抜こうとせずに、少し力んでみて」
「あ、ぅう……」
飾音の言う通りに少し力を入れると、それは熱を伴ってぬぷぬぷと奥まで侵入してきた。
タイミングを合わせてどんどんと深くまで入り込んでくる。
「ああ……っ」
「痛いか?」
飾音に問われ、俺は首をふるふると横に振った。
色々ヤバい。
「じゃあ、少し動くぞ」
――ずちゅん♡ ばちゅッ♡ ばちゅッ♡♡
俺が返事をする前に、飾音は律動を開始する。
それは、初心者相手の動きとは思えない、激しいものだった。
「あ♡ ああ……っっ!!♡♡」
「ノンケのくせに男にケツ掘られて感じるなんて、やっぱり素質あるよ、彬良」
飾音に突かれるたび、俺のペニスはぶるんぶるんと激しく揺れる。
高く突き上げるように掲げた尻の位置をキープすることは難しくて、ピストンされるたびにどんどんと下がっていった。
「逃げるな」
「ひぅっっ♡♡」
腰を掴まれ、ばちゅん♡! と最奥まで突っ込まれる。
身体に、脳に、ビリビリとした快感が走った。
背中が勝手に反れて、尻に力が入る。
「くそ、締まりすぎだ……っ」
飾音の焦ったような声が吐息交じりに聞こえ、ゴム越しに熱い液体が放たれたことを知る。
勢いよく放たれたそれが落ち着くまで、はぁ、はぁ、と呼吸を落ち着ける音だけが部屋に響いた。
ぬぽ♡とゴムごとペニスが引き抜かれ、俺のアナルが切なそうにヒクリ♡と蠢いた。
俺の両腕の拘束が解かれると「違和感はないか?」と飾音に問われ、俺はベッドに突っ伏したままコクリと頷く。
「彬良、気持ち良かった」
「……ん。俺も、凄く……良かった、かも」
俺が正直に言えば、飾音がちゅ、と俺の背中に何度もキスを落とした。
こいつ、スイッチの切り替えが上手いな、とぼんやり思う。
まるで愛しい恋人にするかのような行為に、仮にセフレであっても、下手な相手であれば夢中にさせてしまいそうだ。
飾音は甲斐甲斐しく後始末をすると、俺の横に寝そべって背中側から抱き締めるように腕を回す。
女のように細くはない、太く筋肉質の腕。
慣れていないのに、なぜか安心感を覚えながら、俺はそのまま眠りについた。
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