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第1話
「いつもお世話になっております。こちら魔王様へのお荷物です〜。」
魔王、なんてものが魔族の中には今も居るらしい。
だがつまりは魔族の王、というだけ。
俺たち人類と違って、鱗だったり、翼だったり、尻尾だったりを持つ彼らは、総じて人類より身体能力が高い。
400年前くらいには世界征服なんてことを考えた魔王も居たらしいけど、そんな緊迫感は今は無く、魔族はこの島国で自分たちの国を健全に営んでいる。
俺が就職した会社が魔族のこの国に支店を出して普通に営業できるくらいには平和。
そして今日も今日とて俺は、魔王の住む城、通称『魔城』の魔王プライベートルームに行くよう、最上階まで通されるが、部屋の前で衛兵に伝票と荷物を押し付けて立ち去ろうとする。
サイン?
んなもん知るか。
「おーい、郵便屋。」
鷹頭の衛兵が恐らく俺を呼んでいるが、俺は郵便屋ではない。
俺の仕事は宅急便だ。同じだと言う者も居るが違う。俺はあんな紙切れ抱えて走り回る仕事ではない。
俺は今年から魔族のこの島に配属になった配送係。
郵便でなく宅急便担当になれたことは喜ばしいことだが、1つ、大きな悩みがある。
「魔王様がお呼びだ。」
「………………。」
「おぉーい!郵便屋!」
「俺は郵便屋ではないので、失礼します!集荷のご依頼はフリーコールへ!!」
そう言い切って「では!」と手を挙げたところまでは良かった。
その先が良くなかった。
挙げた手を後ろから握りこまれるまで、俺はそいつに気付かなかったから。
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