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第2話

「いつもつれないなぁ。私の所が最後になるようお前の会社には連絡してあるのだが?」 くっそ。お前いつの間にそこに居た。気配消すのやめろよ。いや、気配出しても気付かないけど。俺人間だから。 「これはこれはぁ。魔王様〜。ご機嫌麗しく。」 俺より頭1つ分くらい大きなそいつに作り笑顔100%で挨拶すると、そいつは高い位置から俺を見下ろし、赤い瞳をニッコリと細めて笑った。 くそ。無駄に顔が良い。 魔族の中では中の上程度らしいが、魔族自体がなんというか、神秘的な美しさを持つ一族で、一般魔族が人間で言う上の部類だから、こいつも人間の世界で言ったら特上だ。 魔族なのに天使の輪が輝く艶やかな黒髪と長い睫毛に縁取られた赤い瞳。肌は陶器のように白く滑らかで、人間とは違う美しさを放っていた。 「残念ながら俺はつれないんです〜。いつやっても釣れないんです〜。人間なもんで。それと魔王様はご存知無いかもしれませんが、配送が終わった後も仕事はありますんで。なので今日もこのまま失礼します〜。」 皮肉というかもはや嫌味を言うつもりでそう返して握られた手を力強く振る。のに、魔王の手が離れない。 「だから仕事など辞めていい加減私の所に来いと言ってるだろ?」 またこいつは。 どこで俺の何を気に入ったのか知らないが、こいつは事ある毎に俺にプロポーズをかましてくる。 「あはは。お断りします〜。それより早く手を離してください〜。」 握られた手を離そうと、より一層強く振ってるのに目の前のこいつはニコニコしたまま。前にもこんなことがあって俺もムキになって思い切り体ごと揺らしたら肩が外れたことがあった。 だからもうあんな間違いはしない。 「おいふざけんな。離せボケ。」 イライラして乱暴に返すと、魔王は嬉しそうに笑う。 「前と同じように暴れてみたら良いんじゃないか?」 「肩外れたんだよ。くそ痛ぇんだから、2度とするか。」 「あの時のお前は可愛かったなぁ。真っ赤な顔で泣き腫らして…私も興奮してしまって悪かった。私のを咥えながら涙を流すお前が可愛くて我慢がきかなくて……。」 「うるっせぇぇぇ!それ以上喋んな!!」 握りこんだ手にキスをしてくるコイツに鳥肌が止まらないし、発言にも鳥肌が止まらない。 そう、俺は肩が外れた日、あろう事かこの魔王に犯された。 利き手である右腕が動かせない中、慣れない痛みに子供みたいに涙を流しながらも、覆い被さってくるこいつに必死で抵抗した。 それでも元々体格で負けているのだから俺はされるがまま、人間では考えられないサイズの魔王のソレをぶち込まれた。そして更に泣いた。もう号泣。 「やめてくれ」「お願いだ」「もう許して」なんて、似つかわしくないセリフを片っ端から並べたのに、コイツは「可愛い」「可愛い」と、そればっかりで、結局、時折意識を飛ばす俺を揺り起こしては自分が満足するまで俺を犯し抜いた。 翌日の昼になって漸くこいつは『仕事だから』、と俺から離れたが、ベッドの上で亡骸のように転がる俺にまた愛撫をしてから去って行った。魔王からは、『隙あらば犯す』という気配が嫌でもしたから俺はまた泣きながら痛む肩とケツを気遣いつつ城から脱出したのだった。

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