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第12話

俺が居なくなって2ヶ月。 魔国では国を挙げて消えた妃の捜索が行わているらしい。 そんなことを、港で働く知り合いのおじさんから聞いた。 俺が魔国を抜け出して飛んできたのは実家。魔国から近くはないが、遠くもなく、多くの民間交易船が行き交う港町だ。 消息不明になっていたと思ったら突然歩けない状態で帰って来て、しかし代わりに翼が生えて、更に身篭っているという、少し見ない間に何もかもが変わってしまった息子に対し、両親は本当に腰を抜かすほど驚いていた。 詳細はぼかしながら事の経緯を話すと両親は怒り狂って『大使館に通報してやる!!』と暴れたが、相手が一国の代表者ということもあるし、何より俺がそんなことは望んでないので踏みとどまらせた。 それから会社にも連絡を入れる。会社には『事故で両足が動かなくなってしまって、暫く保護されていた』と、嘘も方便とばかりに伝えた。 宅急便の仕事以外には興味が無かったし、できる訳もない俺は、そのまま退職の運びとなった。 あぁ、本当に宅急便の仕事から離れてしまったなぁ…、と無職になった身で実家の窓から見える港を見つめる。 この足だ。もうきっと、一生、宅急便の仕事はできない。 そう思いながら宅急便の仕事を目指したきっかけを思い出す。 まだ俺が幼い頃、港町に取り残された木箱の中で泣く小さな男の子を見付けた。 イタズラで入ったらどこか分からない場所に来てしまったんだ、なんて、綺麗な顔にボロボロボロボロ大粒の涙を浮かべながら泣くその子。 その当時、俺の両親は港から各地への配送の仕事をしていて、俺はその子を助けたいのと両親の真似事がしたいのとでその子に『自分が助ける』と笑いかけた。 「僕が両親のところに送り届けてあげる。だから泣かないで。僕、将来お届け物のお仕事をするんだ。君は僕の最初の荷物だよ。」 人のことを荷物扱いだなんて、今考えるとふざけた話だけど、当時は最高にかっこいいと思っていた。 その子が入ってた木箱が魔族の国の特産である魔石を入れる箱だということ、そして今日ちょうど魔石の分の船が来たばかりだったのだということから、その子が魔族の子だということはすぐに分かった。 翌日、定期便に乗って魔国に渡り、船の中で1晩を明かしてから魔国に降り立つと、男の子の両親を探して歩き回った。 あの頃はどこまで行ったんだろう。 街並みも何もかも今とは違うから判断なんてつかないけど、当時の俺は今まで経験したことないその距離に、『きっと魔国のほとんどを歩き回ってしまった』なんて思っていた。 なんなら魔国行きの船に乗った時点で世界の全てを踏破したつもりでいた。だって子供にとって家以外で1晩を明かすなんて大冒険の中の大冒険だ。 そうして歩き回ってようやく男の子のことを知る初老の男性を見付けた。 彼は酷く狼狽していて、男の子を見付けると「良かった!」と大人なのに大泣きしていた。 次いで男の子の両親や、動物の頭をした人たち、とにかく大勢の大人たちが男の子のことを迎えに来て、皆「本当に良かった。ありがとう。」と、泣いて俺に礼を言ってくれた。 男の子の両親は「お礼がしたい」と、俺を夕食に招こうとしてくれたが俺は魔国に来たことを両親に話していない。きっと今頃、自分の両親がこの大人たちのように慌てふためいているに違いない。 そこで漸く両親のことに思い至って、誘いを断り急いで走り出す。 俺は「じゃあね!」と、大きく手を振って男の子と別れた。 綺麗な顔のあの子の、本当に嬉しそうな表情。 幸せを届ける仕事、それがこの仕事だ、と思った瞬間だった。 「あの子は今頃どうしてるかな…。」 そんなことを考えながら、その日は眠りについた。

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