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第13話

実家に戻って暫くしてから俺は卵を産み落として、その卵を見た母親は「孫が見たいと思ってはいたけどこういうことじゃない…。」と、リビングでココナッツ程の大きさの卵を温める俺を見つめた。 分かる…。だよねぇ…! と、少し後ろめたく思っていたが、卵から孵った雛を見てから、両親はなんだかんだ愛情を雛にも注いでくれた。 本で予習していた俺と違い、卵から人間の形で産まれてくるものと思っていた両親は、初めて見た産まれたての鳥の雛の姿に度肝を抜かれていたようだ。毛も生え揃っていないその弱々しい姿が心配になったのか、「ご飯が足りないんじゃないか」「寒そうだから毛布を使え」と思ったよりずっと手厚く子育てをサポートしてくれた。 そして1ヶ月も経つ頃には毛が生え揃いピチュピチュと(さえず)っては周りをウロウロする黒いパヤ毛の塊がかわいくて仕方がないのか、両親は喋れないその子に「どうしたの〜?」と話しかけてはデレデレしていた。 更にもう2ヶ月ほど経つと段々とパヤ毛が抜けていった。あまりの早さで抜けていくものだから最初はストレスでハゲてしまったのかと思い、「やはり魔国とここでは何かが違うのか…!?」と困惑したが、完全に禿げ上がってしまう頃に雛は人間の姿に変われるようになった。 そしてその人間の姿を見た両親は更に目を輝かせて「かわいい子ね〜!」と、孫を捏ねくり回した。 どんな経緯で産まれたにせよ、やはり孫は可愛いということなのか。溺愛が止まらない両親に、俺の杞憂は無くなっていった。 まぁ、可愛いよね。うん。魔族の血が入ってるのもあると思うけど、可愛いもんね。俺の子だからかな?天使だよね。魔族だけど。 魔国では引き続き王妃と王子の捜索が行われているらしい。 いや、王妃て。 王妃…、なのか?俺。いや、でも王妃て。 しかも子供は女の子だった。 王女だよ。ばーーーーか。 お前と違って優しくて、結局俺の腕だって傷付けずに長距離飛行にも耐えうる立派な翼を生やして操作してくれた、親思いのめちゃくちゃ良い子だ。 めちゃくちゃ良い子でめちゃくちゃかわいい。 いや、産んだの自分なんだけど。親バカかもしれないけど、まじでかわいい…。産んで良かった…。 魔族の成長は早い。動物のような特性を残しているからか、彼らは幼少期が短く青年期が長いそうだ。 この子も言葉こそまだ喋らないが、隙あらば翼を生やして部屋の中を飛び回ろうとするし、生え揃った牙で家中のものに噛み付いていた。 そして次第に大きくなる子供を見ながら、俺は魔城を出る前に決めていたことを両親に話す。 それは、魔王の元へ戻る、ということ。 いや、本当はもっと後の予定だったんだけど、この子を出産したらなんと同時に翼も出なくなってしまって、結局歩けない生活に逆戻りしてしまったのだ。 考えたら当たり前なのかもしれないけどさぁ…少しは何かを母体に残してほしかった…!! 赤ん坊を産んだ途端歩けも飛べもしなくなった俺では、好き勝手飛び回っては暴れ回る我が子をどうすることもできなくて、相変わらず配送の仕事をしているから朝が早い両親が、毎晩脱走を繰り返す娘を泣きながら追いかけて行くのを見るとなんかこう…申し訳ない気持ちが募るどころか溢れた。 「ということで、ここを出ていこうと思います。長期休暇の時は帰ってくるよ。その時はよろしく!」 そう言って頭を下げた俺に両親は「でも…」と困惑していた。 けど、これは魔城を出る前に決めていたことなのだ。 子供が4ヶ月になる前に、魔城には戻る。 俺の意思が固いことを悟った両親はそれ以上何も言わなかったが、やはり心配をかけているのだろう。翌日、車椅子を自分で押して魔国行きの船に乗りこんだ俺を、両親は不安そうに見つめていた。 まぁ経緯が経緯だから不安になるのは分かるけど、あまり心配し過ぎないでほしい。 あいつはきっと、この子も俺のことも一生大切にしてくれる。 あの半年、魔城の中で過ごして、俺はいつしかそんな確信を持っていた。

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