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11-5 もうどこにもいくなよ(5) 王城の甘い夜

事件の収束から数日後。 王都はようやく日常を取り戻しつつあった。 街の人々は「聖者様が迷宮を封じた」と口々に語り、子どもたちは瓦礫の山を指さして英雄譚を語り合う。 そんな中、王城の一室でユリウスは深いため息をついていた。 「まったく……毎回毎回、どうしてレオンはあんな無茶苦茶なんだ?」 ルカが微笑む。 「陛下。聖者様は陛下のために命を懸けているのです。お分かりでしょう?」 「わ、分かってる……! でも、胸がキュッとするんだ……」 赤面しながらも口を尖らせる。 そんな二人の会話に、扉を叩く音が割り込んだ。 「よぉ、入っていいか?」 聞き慣れた声。 ユリウスの胸の鼓動が速くなる。 「……レオン……」 慌てて立ち上がると、ルカは気を利かせて一礼し、部屋を出ていった。 **** ベッドサイドで腕を組むユリウス。 街で流行っている例の武勇伝について、恨めしそうにレオンハルトを責め立てる。 「こっちは、本当に……心臓が止まるかと思ったんだぞ! 無茶ばっかりして」 レオンハルトはベッドに腰を下ろし、余裕の笑みを浮かべる。 「俺が死ぬわけねぇだろ。お前は俺のものだ。置いていくわけがねぇ」 「な、何それ……勝手に……!」 顔を赤らめ抗議するユリウスの顎を、レオンハルトはぐっと指先で掬い上げる。 「心配するな。俺が勝手に全部守る。お前は俺の腕の中で甘えてろ」 言葉と同時に首筋へ熱い口づけが落とされ、ユリウスの身体が小さく震えた。 **** レオンハルトの指先はユリウスの体を隅々まで触れていく。 そして、衣服は、一枚、一枚、丁寧に解かれ床へ放り出される。 生まれたままの姿になったユリウスは、シーツにくるまり抵抗するように小さく呟いた。 「……お前、最近ロイとばかり一緒にいるだろ……」 レオンハルトはにやりと笑い、耳元に唇を寄せる。 「お、妬いてんのか?」 「ち、違う! べ、別に……!」 「可愛いな。俺のこと考えて泣いてたクセに」 剥がされるシーツ。 そして、そのままベッドに押し倒され、唇を奪われる。 「ん……っ!」 必死に背を反らすが、腰をしっかりと押さえ込まれて動けない。 「やっぱりお前は俺だけ見てろ。俺以外に目を向ける必要なんざない」 荒々しくも甘い囁きに、ユリウスは抗えなくなっていった。 身も心もレオンに預け、幸せと歓喜の渦に溺れるユリウスは、次第に強がりが解けてゆく。 代わりに素直さが出てきたところで、ユリウスの瞳に涙が浮かんだ。 「……怖かったんだ。本当に戻ってこないんじゃないかって……!」 その一言に、レオンハルトは目を細め、優しく髪を撫でた。 「へぇ、珍しいな。素直になるなんて」 「うるさい……バカ……」 抱き寄せられ、温もりに包まれる。 「安心しろ。俺はお前を置いて死なねぇ。泣き虫王様をひとりにできるか」 唇が重なり、下部には再度あてがわれる。 「あっ……っ、待っ……」 「待たねぇよ。お前が欲しい」 その夜、王城の静寂を破ることなく、二人は互いを確かめ合った。 レオンハルトは強く、優しく、執拗にユリウスを抱き尽くす。 ユリウスは何度も名を呼び、泣き笑いしながら、ようやく心の底から安堵を手に入れた。 夜が明ける頃、ユリウスは彼の胸に顔を埋め、かすかに呟く。 「……もう、どこにも行くな……わかったな」 ユリウスは、塩らしく、コクリと頬を赤らめて頷く。 レオンハルトは微笑み、額に口づけを落とした。 「安心しろ。俺の居場所は、最初からずっとここだ」 王城の外では、静かな風が吹き、小鳥たちのさえずりが新しい朝を告げていた。

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