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14-4 男と男の約束(4) 無邪気なふれ合い

晴れた日の昼下がり。 森の奥の泉は、光を受けてきらきらと輝き、風がそよそよと吹き抜ける。 「わあ……きれい!」 ユリウスは靴を脱ぐと、ぴょんと飛び込む。 水しぶきをあげながら、楽しそうに笑う。 「……ちょ、こら! 飛び散るだろ!」 レオンハルトは思わず目を細めた。 ユリウスの無邪気さに胸がキュッと締め付けられる。 (……なんだこの可愛さ……) 思わず目をそらす。 恥ずかしさを隠すため、レオンハルトはちょっと意地悪に笑いながら、水をユリウスにかけた。 「ひゃっ、な、なにするの!」 「だって、わざとオレにひっかけたんだろ? 水しぶき。オレの気を引こうとしているのバレバレだぞ」 ユリウスは顔を真っ赤にして水を払いながら、怒りと照れで言葉を詰まらせる。 「も、もう……意地悪……!」 レオンハルトはくすくす笑いながら、ユリウスの手首をつかんで引き寄せた。 「……んっ、ちょっと……離してよ!」 「いやだ、離せねぇ」 レオンハルトは真剣な目で見つめる。 少し強引に唇を重ねると、ユリウスは驚きつつも、もじもじと体を預けた。 「んっ……」 「……照れちゃって、かわいい」 恥ずかしさで顔を背けるユリウスに、レオンハルトは優しく額にキスをして、頭を撫でた。 **** 遊び疲れて、岸辺で重なるように寝転ぶ二人。 ユリウスは流れる雲を見つめて問いかけた。 「ねえ、レオン。聖者って知ってる?」 「……ああ、聞いたことはある。王のそばにいる人だろ?」 「うん。王さまといつも一緒にいて、守って、支えて……ずっと離れないんだって。そういうの、いいなあって思うんだ」 小さな吐息と、ほんのり涙ぐんだ顔。 レオンハルトは、ユリウスの孤独を察した。 (……やっぱりユリウスのやつ、寂しいんだな……) 「……ぼくにもいつか……なんてね」 ユリウスは、照れ隠しににっこりと笑った。 レオンハルトは、ユリウスの頭をポンポンと撫でる。 「……そうか、いつか聖者と出会えるといいな」 「うん」 二人は優しく微笑み合う。 レオンハルトは、胸の奥がじんと熱くなり、またユリウスを抱きしめたくてたまらなくなっていた。

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